購入編

不動産業者物件 VS インターネット掲載物件~実勢価格を計算して比較する方法~

不動産業者が提案してきた物件を、インターネットで検索してみると「あれ?値段全然違くないか?」と思ったことはありませんか?

インターネットで物件の価格感を確認したり、周辺で出ている相場を確認することは、大正解です。

非常に重要なことです。

しかし、ある程度正確に比較する方法を知らないと、インターネットに出ている物件が常に安く見えてしまいます。

インターネットに掲載されている物件と、不動産業者が出してくる物件を比較する方法について書いていきます。

また、インターネットに出ている、「参考価格」や「想定価格」も同じです。

最近は大変多くのサイトが、不動産の価格をデータからなんとか算出しようと四苦八苦しています。

しかし、これらはあくまで過去データをベースに、自社独自のアルゴリズムで計算しているため、「今」の相場を反映していないことが多く、こちらもあまり参考になりません。

・マンションNavi

・マンションマーケット

など、2019年現在、相当数存在していますが、全てのサイトで価格が違います。

それほど、その会社のアルゴリズムによってズレが生じるのです。

全ては、「今」の相場を実勢価格で比較しないと、意味がないのです。

※今回の記事は、区分マンション(ワンルーム)の話です。

インターネットに掲載されている販売履歴や、販売中の物件にもトリックが隠れています。

お、安いな!

どうにかして買えないかな!

と思ったとき、それが何らかの登録に誘導するサイトかどうか確認してください。

問合せを目的として、正しくない情報が掲載されることもよくある業界です。

問い合わせると・・・

業者「物件あります!いつ面談に来れますか?」

顧客A「×月×日の○時でお願いします!」

業者「当日お待ちしております!」

 

当日・・・

業者「先日の物件は完売してしまいました。こちらの物件なんかはいかがでしょうか」

・・・

といった具合です。

こんな狙いもあるのです。

存在しない物件の情報で問い合わせをさせ、面談して別の物件を売る、という行為です。

インターネットに出ている全てが正しいと思い込むのは禁物です。

今、現実に売りに出ている物件以外は、参考程度になります。

 

前述したマンションNavi、マンションマーケットのようなサイトも同じです。

使えそうに見えて、会員登録をさせ、そこで出ている物件情報などをベースに問い合わせを獲得しようとしています。

サイトに登録し、物件が安く買えそうに見えるものが販売されていたらどうですか?

なんか登録して問い合わせてみたくなりますよね?

狙いは同じなのです。

実勢価格の簡易計算方法

不動産業者の物件と、インターネットで検索した物件は、実勢価格で比較しないといけません。

簡単にいうと、購入総額での比較です。

これを怠ると、常にインターネットの物件の方が安く見えます。

これからの来ぞを読むのが長くて面倒!

という人は、インターネットの物件を1.1倍した金額で、不動産業者の物件を比較してください。

これでザックリ購入総額での比較が可能です。

【不動産業者の物件】

物件価格 = 購入総額

 

【インターネットの物件】

物件価格 + 仲介手数料 + 諸費用 = 購入総額

となります。

インターネットの物件には、仲介手数料と諸費用が入っていないので、安く見えて当然です。

仲介手数料と諸費用ならびに仲介物件の融資の引きにくさ(金利の高さや頭金)を考慮して、1.1倍すると比較の対象として合理的でしょう!

不動産業者の物件が2,000万だとします

インターネットの物件が1,800万だとします

これだけだと200万安く見えますが、1.1倍すると、1,980万円になります。

すると、ほとんど同じ価格になりました。

この場合は、提携ローンが使える不動産業者の物件のほうがよくなるわけです。

こうやって比較しましょう。

ネットの物件は1.1倍にしてから比較せよ!

 

それでは細かい実勢価格の計算に入っていきます!

専有面積

専有面積は、㎡単価に割り戻して再計算する必要があります。

【不動産業者物件】

販売価格:3,750万円

専有面積:33㎡

 

【インターネット掲載物件】

販売価格:2,880万円

専有面積:27㎡

こちらを例に解説していきます。

価格だけ見ると、インターネット掲載物件の方が安く出ています。

しかし、専有面積が違います。

そこで、専有面積を合わせます。

インターネット掲載物件は、2,880万円で27㎡です。

1㎡あたり、約106.7万円です。

 

33㎡に戻すと、約3,521万円になります(106.4×33)。

仮に、インターネット掲載物件が、不動産業者が出した物件と同じ33㎡だったとすると、3,521万円である、という計算です。

すると、今のところ、まだインターネット掲載物件の方が安く見えます。

まずは、面積の違いを考慮して計算するところからスタートします。

 

専有面積に関しては、大きい物件の方が、㎡単価は安くなります。

例えば、専有面積60㎡の物件と、20㎡の物件があったとき、60㎡で出ている価格の3分の1が20㎡と解釈するのは誤りです。

面積が大きくなると㎡単価が落ちることを認識しておきましょう。

20㎡台同士、40㎡台同士、60㎡台同士、など、ある程度近い面積の物件同士を比較しないと、適切な価格にたどり着きません。

仲介手数料

仲介物件とは、仲介手数料がかかる物件を意味します。

不動産業者が売主になって販売している物件は、仲介手数料がかかりません。

これは非常に大きな差になります。

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インターネット掲載物件は、仲介手数料がかかります(かからない売主物件もたまにあります)。

2,880万円の仲介手数料は、約100万円です(売買代金×3%+6万円 別途税)。

すると、インターネット物件の方が100万円安かったとしても、不動産業者の物件と価格としては等しくなります(インターネット掲載物件は、物件価格に100万円を足さないといけない)。

専有面積で再計算した結果、インターネット掲載物件の価格は、約3,521万円と等しかったことが分かっています。

この金額に、100万を足すと、3,621万円になります。

登記関連諸費用

不動産業者が販売している物件は、区分マンションに関しては、ほぼ登記関連諸費用が込みになっています。

不動産業者で異なるので、登記関連諸費用が別途かかるのか、販売価格に含まれているのかは確認してください。

今回は、登記関連諸費用込みの不動産業者を想定します。

登記関連諸費用は、3,000万前後の物件の場合、ザックリ80万円~100万円ほどです。

100万円と仮定します。

すると、インターネット掲載物件には、この費用も加えないといけないのです。

先ほどまで3,621万円だった金額は、100万円が追加されて3,721万円になりました。

その他付帯サービス

不動産業者が販売している物件には、付帯サービスがあるケースもあります。

1回の退去費用を負担する

1回の空室は保証する

不動産取得税はサービスする

など、色々あります。

サービスの内容を金額に直します。

多くの不動産業者は、何らかのサービスを提供しており、今回はその価値を20万円とします。

インターネット掲載物件に、このようなサービスはありません。

先ほどまで3,721万円だった金額は、20万円が追加されて3,741万円になりました。

さて、するとどうでしょうか。

【不動産業者物件】

3,750万円

【インターネット掲載物件】

3,741万円

ほとんど等しくなりました。

賃料・階数

入居者から取れている賃料も重要です。

例えば同じ面積でも、1階と10階では価値が変わります。

取れる家賃も、10階の方が高くなるので、その分10階の方が高い資産価値があると言えます。

1階と10階で価格が同じであれば、それは間違いなく10階を購入すべきということです。

家賃から利回りを計算するので、実勢価格に修正してからそれぞれ利回りを比較してみるのも手です。

例えば今回の場合、不動産業者物件の利回りが3,750万円に対して4.8%で、インターネット掲載物件の利回りが、3,741万円に対して4.6%であれば、不動産業者物件のほうが優秀、ということになります。

例えば、周辺の利回りが6%の物件があったとします。

取れる家賃が、3,000円違うと、どの程度価格差が出るのでしょうか。

3,000円×12カ月で36,000円になります。

3.6万円の価値をりまわり6%で算出すると、60万円になります(3.6万円÷6%)。

1階で81,000円の家賃、5階で84,000円の家賃だった場合、5階の方が1階に比べて60万円販売価格が高くても、合理的と判断できるのです。

実勢価格に戻してから、取れている家賃をベースにそれぞれを比較してください。

管理費

区分マンションの場合、管理費は、収支にダイレクトに影響を及ぼします。

よって、結論から書きますが、管理費が低い物件の方が、価格は高くなります。

仮に似たような物件があったとき、

物件A:管理費1,3000円

物件B:管理費8,000円

であれば、価格は物件Bのほうが値段は高くなります。

上記物件が同じ金額であれば、物件Bを選択すべきです(毎月の収支が5,000円も違う)。

管理費は、総戸数に比例しており、総戸数が多いマンションの方が、一般的には安くなります(一部タワーマンションなどを除く)。

通常の区分であれば、管理費が高額すぎると収支を圧迫するだけでなく、マンショングレードそのものが低い場合があるので注意が必要です。

販売時期

不動産には、株式市場と同様、相場があります。

インターネットに掲載されている物件の履歴が、何年も前であれば、それは今の参考にはあまりなりません。

株式市場で考えます。

3年前に大和証券グループ本社株が380円だったとします。

今現在の株価が880円とします。

3年前に380円だったから、今の880円は割高なので、過去取引のあった380円で買いたい!

といっても不可能なのは誰でもわかります。

不動産も同じです。

時期によって、特に区分マンションは値段が動きます。

過去安かったから、という理由で、今が高い、とは言い切れないのです。

勿論、株でも天井という表現があるように、割高圏で推移している、ということは言えます。

しかし、それは未来になってみないとわからず、少なくとも過去の値段で今買うことはできないのです。

このため、過去の履歴は、参考程度ということになります。

 

これは、たびたび登場する、マンションNaviやマンションマーケットのような、不動産価格予想サイトでも全く同じことが言えます。

過去安かった時期のデータが加重平均される傾向があるため、例えば2019年現在では、全ての販売物件が、これらサイトに出ている「想定価格」より高くなっています。

前述した大和証券の株価と同じロジックです。

3年前に株価が380円で、今が880円とします。

平均すると、630円です。

なので、想定価格は630円!と出すのが多くの査定サイトですが、当然のことながら、現在880円前後で推移している株を630円で買えるはずもなければ、それが適切でもありません。

インターネット掲載物件最大のデメリット

インターネット掲載物件の最大のデメリットは、多くの自己資金が必要、ということです。

2019年現在、区分マンションであれば、ほとんどの不動産業者が、頭金10万円で購入できるようにローンをパッケージ化しています。

インタネット掲載物件になると、不動産業者でパッケージ化された物件ではないので、前述した仲介手数料のほか、登記関連諸費用がかかります。

それだけではなく、フルローンも原則難しくなり、頭金も10%ほどは求められる可能性があります。

さらに、パッケージ化されていないインターネット掲載物件の場合、金利がかなり高くなります。

パッケージ化されている物件の金利は、おおよそ1.64%~1.9%です(2019年現在)。

しかし、インターネットに掲載されている物件は、2.5%~3.5%前後になる可能性が高く、中長期でみると元金返済速度の相当の差が出てくるので、注意が必要です。

入口で少し安くても、金利が高いと意味がありません。

今回、仮にインターネット掲載物件を2,880万円で買おうとするならば、

仲介手数料:100万円

登記関連諸費用:100万円

頭金:290万円

合計:490万円

の自己資金が必要なのです。

さらに、金利が高いというパンチです。

まず、あなたはその自己資金が用意できる人ですか?

この問いに対し、YESであれば、仲介物件の検討も可能になってきます。

NOであれば、不動産業者が販売している物件を買う以外の選択肢はありません。

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しかし、割高の物件を買う必要はないので、しっかりと売値を考慮し、実勢価格を計算し、妥当な価格で購入することを心がけてください。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。

インターネットに掲載されている物件と、不動産業者が出してくる物件の比較は簡単ではないのです。

正しく実勢価格同士を比較しないと、意味がありません。

インターネット掲載物件は、仲介手数料と登記関連諸費用を除いた金額で出ているので、不動産業者が出す物件よりも、100%の確率で安く出ています。

インターネット掲載物件から仲介手数料と登記関連諸費用を足し、付帯サービスの差額を追加した上で、初めて比較できるのです。

実勢価格に大差がなければ、あとは自己資金との相談になります。

490万円を使って買うのか

10万円だけで買うのか

です。

自己資金とのトレードオフは、大変重要です。

どこまでの差額であれば許容できるのか、よく考えておくべきでしょう。

実勢価格と比較した結果、不動産業者の物件の方が、300万円高い!

ということであれば、自己資金とのトレードオフ以前に、買わないほうが良いのです。

それは、単純に不動産業者が割高で売りつけてきているからです。

インターネット掲載物件は、このような比較としての利用価値は大変あります。

実勢価格同士で並べ、数百万円違えば買うべきではないでしょう。

相場を加味した比較は、意外に簡単ではないのです。

是非念頭に置いておいてください。