購入編

低い金利が必ずしも正解ではない~返済期間と金利のバランスが重要~

金利は低いほうがいい!

これは当然の話です。

しかし、複数の銀行を比較したときの決定要素は、金利だけではありません。

返済期間も加味して融資を受ける銀行を決めるべきです。

中長期的な投資である不動産購入の融資返済期間は、キャッシュフローに与えるインパクトも大きく、場合によっては金利よりも重要な要素となります。

既に別の物件を数棟保有しており、十分なキャッシュフローを確保することができている、という状態であれば、返済期間が短くても、低い金利を優先して良いでしょう。

しかし、キャッシュフローに余裕のない状態であれば、返済期間を優先すべきです。

金利と返済期間の両方を比較し、毎月の返済額が低い銀行から融資を受ける、ということを念頭においておきましょう。

キャッシュフローに余裕のない状態で開始する不動産投資ほど、危険なものはありません。

—書籍より抜粋—

誰も触れない不動産投資の不都合な真実 (経営者新書) [ 八木剛 ]

資産家などの場合は、より低い金利を提示してきますが、「低いほどいいはず」とつられてしまうのはNGです。

融資契約を選ぶ時には、返済期間と金利のバランスをしっかり考える必要があります。

高金利には注意

返済期間が長いからと言って、高金利で借りることに関しては、注意が必要です。

銀行が高い金利を設定してくる主な理由は、

融資額が物件の資産価値を超えている

属性が低い

資産背景が十分ではない

など簡単にいうと、銀行がリスクと考える物件または人物またはその両方に関して、金利を高く設定すると考えてください。

【例】

《高金利》

物件価格:8,500万円

融資額:8,500万円

物件の銀行評価額:5,500万円

エリア:田舎

 

年収:700万

金融資産:400万

物件の銀行評価額は5,500万円なのに対し、8,500万円の融資をしています。

「そんな銀行ないでしょ」と思うかもしれませんが、あるのです。

銀行も民間企業です。

リスクを取って融資の決断をすることは、よくあります。

リスクを取る代わりに、高い金利を設定しているのです。

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このような物件の金利は、3%後半から4%半ばくらいになるでしょう。

銀行から見ると、3,000万円も銀行評価額以上に融資をしています。

エリアも田舎です。

加えて、物件を購入しようとしている人の属性は決して高くありません。

さらに、不動産投資をするに十分な金融資産を持っているとも言えません。

明らかにリスクを取った融資になるので、その分金利が高くなります。

高い金利を設定することで、早い段階で利息収入を得ることにより、リスクヘッジをしています。

《低金利》

物件価格:8500万円

融資額:4500万円

物件の銀行評価額:7500万円

エリア:都心

 

年収:1,800万円

金融資産:12,000万円

今度はどうでしょうか。

物件の銀行評価額は7,500万円ですが、4,500万円融資しかしていません。

頭金を4,000万円入れていることになります。

このような状態は、銀行にとっては安全です。

エリアも都心であり、売るときのリスクも低そうです(買い手が付きやすい)。

すると、先ほどの例とは異なり、金利は低く、0%台~1%台が十分可能になります。

本人の属性もよく、金融資産も1億円を超えています。

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返済期間と金利のバランス

銀行を決めるとき、必ずしも金利が低い銀行が最善の選択ではないのです。

毎月の返済額は、中長期的な運用をする不動産投資では大変重要になってきます。

基本的には、毎月の返済額は、低いに越したことはありません。

毎月の返済額は、以下の要因で変動します。

・金利(低いほうがいい)

・返済期間(長いほうがいい)

両方のバランスを見たうえで、借り入れる銀行を決めていくと良いでしょう。

 

以下の物件条件(アパート)で金利と返済期間から毎月の返済額を比較します。

物件価格:6,300万円

自己資金:1,000万円

借入:5,300万円

月額賃料:37万円

戸数:6

 

【金利:低い / 返済期間:短い】

金利:1.5%

返済期間:20年

返済額:約25.5万円

月額賃料から計算する返済比率(賃料から返済に充てられる比率)は、約68.9%になります。

返済額 ÷ 月額賃料 = 返済比率

これは危険な水準です。

家賃から返済額、賃貸管理手数料、建物管理清掃費、固定資産税月割、電気水道など各種費用を差し引くと、手元にほとんど残らなくなります。

これでは1部屋空くと赤字に転落するリスクもあり、危険水準と言えます。

金利は魅力的ですが、返済期間が短いため、返済額が多く、その間のリスクは高くなります。

 

【金利:高い / 返済期間:長い】

金利:3%

返済期間:35年

返済額:約20.3万円

返済期間が短いときと比べて、毎月の返済額が5万円以上下がりました。

返済比率は54.8%に下がりました。

空室が2部屋あっても、なんとか回りそうな水準となりました。

 

【金利:やや高め / 返済期間:長い】

金利:2.5%

返済期間:35年

返済額:約18.9万円

返済比率が約51%まで下がりました。

ある程度のエリアで考えると安全な水準にまで返済比率が下がっています。

 

今回3つのケースを比較しましたが、一番安全に不動産投資ができるのは、一番最後の金利2.5%かる返済期間35年になるでしょう。

金利が1.5%のケースは確かに魅力的ですが、返済期間が20年と短く、返済比率が危険水準に到達しています。

家賃は築年数とともに下落します。

しかし、ローンの支払額は変わりません。

購入当初から危険水準になっている場合、今後さらに危険度が増すでしょう。

すると、運用が苦しくなり、本末転倒です。

しかし、逆に金利が高すぎても、返済元金があまり減らず、これもリスクになります。

金利と返済期間のバランスを考慮し、返済比率が安全圏になるような物件を購入することを心がけてください。

まとめ

金利が低くて返済期間も長く取れるのであれば、それが最も理想です。

しかし、最初からそう簡単にはいきません。

複数の銀行で審査した際は、金利だけではなく返済期間にも着目するようにしてください。

返済期間は、あとで短縮することが可能です。

しかし、引き延ばすことは基本的にできません。

購入するアパートの実際の経営状態は、購入前から全てを把握することは困難です。

購入時は最大の返済期間を確保しておき、期間を短くするほうが自分自身の投資スタイルに合うのであれば、後で短くすれば良いのです。

返済期間の短縮については、各金融機関で条件が付与(繰り上げ返済に伴う違約金など)されていることもあるので、予め確認しておくと良いでしょう。