購入編

レントロールとは?レントロールに潜む危険を見破る方法

レントロールは、「ただの紙」、「ただのデータ」です。

ただの、不動産業者が作っている資料です。

しかし、レントロールには、非常に重要な情報が沢山載っており、細かく確認してから不動産を購入しないと、痛い目にあいます。

レントロールとは?

レントロールとは、1棟物件における、各部屋の家賃を一覧化している資料です。

フォーマットに決まりはなく、各不動産業者が、自由に作成しています。

【レントロールのサンプル – 1】

部屋番号 専有面積 家賃 敷金
101 18㎡ 6万円 6万円
102 18㎡ 5万円 無し
201 35㎡ 9万円 18万円

部屋番号と専有面積に加えて、家賃や敷金などの情報が記載されています。

レントロールを見ることで、現在どの程度家賃が取れているのか、確認することができます。

サンプルでは、20万円の家賃が取れているアパートということになります。

レントロールの鵜呑みが危険な理由

レントロールは、不動産業者が作成しています。

多くの場合は、エクセルなどを使って作成しているため、間違っていることも珍しくありません。

家賃が違う

・敷金の記載が違う

など、珍しくありません。

悪質なケースですが、レントロールを改ざんし、意図的に実際取れている家賃とは異なる家賃で作って販売しているケースもあります。

レントロール上の家賃は20万円であったが、買ってみると実際は17万円だった、というようなことがあるのです。

また、レントロール上は入居者がいることになっているが、実際に買ってみると空室だった、という悪質極まりないケースもあるので注意してください。

レントロールには、誤りがあると思って確認することを忘れないでください。

レントロールに記載されている家賃と、賃貸借契約書上の家賃を比較するようにしてください。

賃貸借契約書は、入居者が部屋を借りるときに締結する契約であり、そこには家賃や敷金の情報が明記されています。

但し、最新の賃貸借契約書であることの確認は、必要です。

更新が複数回あるような場合は、最初に締結した契約書に記載されている家賃と、現在契約している家賃に差額が生じている場合があります。

レントロールは、あくまで不動産業者が作成した、家賃の一覧である、ということです。

鵜呑みにしてはいけません。

必ず自分自身で、部屋ごとの最新の賃貸借契約書を確認するようにしてください。

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レントロールから分かるリスク

レントロール内の家賃にバラツキがある場合は、要注意です。

買った瞬間に利回りが下落してしまうリスクがあります。

【レントロールのサンプル – 2】

部屋番号 専有面積 家賃 敷金
101 18㎡ 8万円 8万円
102 18㎡ 3万円 無し
201 21㎡ 6万円 12万円

さて、レントロールを見て感じることはありますか?

・部屋番号102の家賃が安い

・部屋番号201のほうが、部屋番号101よりも専有面積は広いのに家賃が安い

この2点くらいでしょうか。

レントロールにバラツキのある部屋で考えられる理由は、次のようなものがあります。

【入居開始が随分前】

例えば、築10年のアパートを購入したとします。

入居者の中には、入居したばかりの人もいれば、10年前から住んでいる人もいます。

10年前から住んでいる人と、最近住み始めた人の違いはなんでしょうか。

最も分かりやすいところでいうと、家賃が違います。

10年前に住んだ人は、新築の時に入居して、そのままずっと住んでいることが分かります。

このため、新築の時の家賃で住んでいることになります(入居者からオーナーに家賃の減額交渉が途中であるケースもあります)。

その反面、最近住み始めた人は、築10年のアパートとして、相応の家賃相場で住んでいることになります。

今回の場合、101号室の人は、長く住んでいる可能性があります。

部屋番号201よりも狭いのに、家賃が高いからです。

このような場合、賃貸借契約書で、入居者が最初に入居した日を確認してください。

長く住んでいる人が退去してしまうと、家賃の総額が減ることになります。

部屋番号101は、家賃8万円で貸していますが、入居者が退去すると、新しい募集は家賃が5万円台になるでしょう。

すると、3万円近い家賃の減額になるのです。

【親族や知人が入居】

部屋番号102は、極端に家賃が安いと言えます。

このような場合は、理由を必ず確認しておきましょう。

住んでいる人が親族や知人であるため、家賃が相場より低い、ということがあります。

家賃の値上げ交渉は可能ですが、入居者のほうがオーナーよりも強い権利を持っているため、交渉に手間取る可能性もあり、リスクと考えておくべきでしょう。

【事故】

事故物件の場合は、告知事項に該当するため、売買をする前にはそのことが告げられます。

死亡事故が発生した部屋については、家賃を低く設定せざるを得ません。

家賃が相場の3割以上低くなることがあります。

部屋番号102のように、低い家賃の場合は、事故を疑うべきです。

事故の場合は、内容について細かく不動産業者に確認してください。

事故物件の場合、売るときも同じような事故物件としての売却になります。

そのことを念頭においておきながら購入を検討してください。

レントロール次第で売値が変わる

レントロールは、不動産の価格に直接影響を与えるほどの資料です。

【レントロールのサンプル – 3】

部屋番号 専有面積 家賃 敷金
101 18㎡ 9万円 8万円
102 18㎡ 5万円 5万円
201 21㎡ 6万円 12万円
202 18㎡ 5万円 無し

全部で4部屋のアパートと仮定します。

月額の賃料総額は、25万円です。

不動産の価格は、現状取れている賃料と周辺物件の平均的な利回りから決められることが多いため、「今」取れている家賃は、販売価格を決める重要な要素になっています。

今回のアパートにおける周辺の利回りは、7%だとします。

月額賃料が25万円であるため、年間の賃料は、300万円になります。

利回り7%で販売価格を計算すると、約4,286万円になります。

しかし待ってください。

レントロールをよく見ると、部屋番号101だけ家賃が高い設定になっています。

このような場合、入居者が入れ替わると、部屋番号102号室程度に家賃が下がってしまう場合があります。

するとどうなるのでしょうか。

部屋番号101の家賃を、5万円にしてみます。

【レントロールのサンプル – 4】

部屋番号 専有面積 家賃 敷金
101 18㎡ 5万円 8万円
102 18㎡ 5万円 5万円
201 21㎡ 6万円 12万円
202 18㎡ 5万円 無し

月額賃料総額は、21万に減りました。

年間家賃収入は252万円となりました。

周辺利回りは7%であるため、7%で販売価格を計算すると、3,600万円になります。

先ほどは、4,286万円であったため、差額はなんと686万円です(4,286万円 – 3,600万円)。

随分な差だと思いませんか?

レントロールを鵜呑みにして、そのままの状態で購入してしまうと、痛い目にあうのです。

まとめ

レントロールは、恐ろしい資料なのです。

よく確認しないでそのまま物件を買ってしまうと、危険です。

・不動産業者が作っているレントロールはそもそも正しいのか?

・レントロールで家賃にバラツキがある場合は、なぜなのか?

・レントロールのバラツキを補正して再計算すると、販売価格は適正なのか?

このような確認は必ず行うようにしてください。

「今」取れている賃料ではなく、「これから」取れると思われる賃料で適正な買値を算出してみるようにしましょう。