この記事を書いた人
船橋寛之(ふなばしひろゆき)
1984年生まれ。
ドイツ育ちの不動産投資家。
不動産投資歴16年。
立教大学 経済学部卒。
リーマンショックの時に新卒で区分マンションを購入し、東京23区を中心に最大6棟55部屋を所有。
大和証券、大和総研に11年間勤務後、不動産コンサルタントとして独立。
現在は年間20億円以上の「非公開物件」仲介を行う。強みは「物件情報力」で、経験を活かしてセミナー講師や執筆活動にも携わる。
私生活では子供3人を育てる「ほぼ主夫」。
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マンションの修繕積立金は、管理組合にとって大切な共有財産です。
この修繕積立金をどのように運用すべきか、多くの管理組合が頭を悩ませているのではないでしょうか。
国土交通省の調査によると、9割のマンションで修繕積立金が不足していると言われています。
かなりやばいじゃん・・
この状況を改善するためには、支出の見直しだけでなく、適切な運用による収入の確保も重要な課題となっています。
しかし、修繕積立金の運用には慎重な判断が求められます。
ペイオフ制度による預金保護の限度額や、各金融商品の特徴、運用開始までの手続きなど、考慮すべき点が数多くあります。
この記事では、管理組合の皆様が修繕積立金を安全かつ効率的に運用できるよう、基本的な知識から具体的な運用方法、実践的なポイントまでを分かりやすく解説していきます。
Contents
マンションの修繕積立金が抱える運用の課題

マンションの修繕積立金は、区分所有者全員の共有財産として適切に管理・運用していく必要があります。
しかし、現状では多くの管理組合が運用面で様々な課題に直面しています。
約9割のマンションで修繕積立金が不足していると言われる中、その運用方法の選択は非常に重要な検討事項となっています。
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リスク管理を最優先に考える重要性
修繕積立金の運用では、何よりも資金の安全性を最優先に考える必要があります。
これは区分所有者から預かった大切な資産であり、将来の修繕工事に確実に充当しなければならないためです。
運用によって資金を増やすことも大切ですが、リスクの高い投資は決して行うべきではありません。
修繕積立金運用におけるリスク管理では、まず元本の安全性確保が最も重要です。
金融機関の信用力や商品の安全性を十分に検討し、慎重に運用先を選定する必要があります。
また、必要な時に必要な額を引き出せる換金性の維持も重要な要素となります。
急な修繕や予期せぬ事態に対応できるよう、適切な運用設計を行うことが不可欠です。
さらに、リスクを軽減するために、複数の金融機関や商品に資金を分散して預けることも推奨されます。
これにより、万が一の事態が発生した場合でも、影響を最小限に抑えることができます。
修繕積立金が目減りすると修繕できなくなるからね・・・
ペイオフ制度が与える影響を理解する
ペイオフ制度は、金融機関が破綻した際に預金者保護を図る制度です。
しかし、一般の預金は1,000万円までしか保護されないため、修繕積立金の運用では大きな課題となります。
特に大規模マンションでは、年間の修繕積立金だけでも1,000万円を超えることも珍しくありません。
管理組合としては、以下の対策を講じる必要があります。
・決済用預金の活用
→全額保護の対象となる決済用預金の特徴を理解する
・預け入れ先の分散
→複数の金融機関に分散して預け入れ、リスクを軽減する
・定期的な見直し
→預け入れ状況を定期的にチェックし、必要に応じて見直す
長期的な資金計画との整合性を確保する
修繕積立金の運用は、長期修繕計画に基づいた資金計画と整合性を持たせることが重要です。
計画的な修繕工事の実施に必要な資金を、必要な時期に確実に確保できる運用設計が求められます。
運用期間や商品の選択は、以下のような要素を考慮して決定する必要があります。
・資金需要の時期
→大規模修繕工事の実施時期に合わせた運用期間の設定
・必要資金額
→工事規模に応じた運用金額の配分
・換金性の確保
→緊急修繕にも対応できる一定額の流動性維持
このように、修繕積立金の運用では様々な課題に配慮しながら、バランスの取れた運用方針を策定することが求められます。
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管理組合が知っておくべきペイオフ制度の基礎
ペイオフ制度は、金融機関が経営破綻した際に預金者を保護するための制度です。
修繕積立金の運用において、このペイオフ制度の理解は極めて重要な要素となります。
管理組合の理事や役員は、安全な資金運用のために、この制度の基本的な仕組みと対策を把握しておく必要があります。
ペイオフで保護される預金額の上限を把握する
ペイオフ制度では、一般の預金等は元本1,000万円までとその利息が保護されます。
この保護限度額は、金融機関ごとに預金者一人当たりの金額として設定されています。
ただし、マンションの修繕積立金は区分所有者全員の共有財産であり、一つの口座に多額の資金が集中することが一般的です。
そのため、以下の点に特に注意が必要です。
・保護対象金額
→一金融機関あたり元本1,000万円まで
・利息の取り扱い
→破綻日までの利息も保護対象に含まれる
・超過分の扱い
→保護限度額を超える部分は返還されない可能性がある
対象となる金融機関と商品の種類
ペイオフ制度の対象となる金融機関や商品について、正確な理解が必要です。
銀行や信用金庫などの預金取扱金融機関が対象となりますが、商品によって保護の範囲が異なります。
保護制度の対象となる金融商品には、いくつかの種類があります。
まず、決済用預金は利息のつかない普通預金で、預入額が全額保護される特徴があります。
次に、定期預金や普通預金などの一般預金等は、1,000万円までが保護の対象となります。
これらは最も一般的な運用手段として利用されています。
また、外貨預金や譲渡性預金については、一般預金等とは別枠で1,000万円までが保護されます。
この仕組みを理解し、適切に活用することで、より安全な資金運用が可能となります。
管理組合として実施すべき具体的な対策
管理組合は、ペイオフ制度に対する具体的な対策を講じる必要があります。
資金を安全に保管するため、複数の方法を組み合わせた運用が推奨されます。
主要な対策として、以下のような方法が挙げられます。
・複数金融機関の活用
→預金を分散して保護限度額を超えないようにする
・決済用預金の利用
→全額保護される決済用預金を効果的に活用する
・安全性の高い商品選択
→国債やマンションすまい・る債などの活用を検討する
このように、ペイオフ制度への対策は、修繕積立金の安全な運用において不可欠な要素となります。
修繕積立金の安全性を重視した運用方法7選

修繕積立金の運用では、安全性を最優先としながらも、適度な収益性を確保することが求められます。
ここでは、管理組合が実践できる具体的な運用方法を7つ紹介します。
それぞれの特徴を理解し、自分たちのマンションに最適な運用方法を選択することが重要です。
普通預金による高い換金性の確保
普通預金は、最も基本的な運用方法の一つとして広く活用されています。
即座に引き出しが可能な高い換金性が最大の特徴であり、緊急の修繕工事への対応に必要な資金を確保する手段として適しています。
ただし、以下の点に注意が必要です。
・利回りの低さ
→0.01%程度と極めて低い金利水準
・ペイオフ制度の対象
→1,000万円までしか保護されない
・運用割合の調整
→必要最小限の金額にとどめることが望ましい
定期預金がもたらす安定した利回り
定期預金は、普通預金よりも高い金利が期待できる運用方法です。
大規模修繕工事の実施時期に合わせて、計画的に資金を積み立てる際に効果的です。
定期預金の特徴と注意点は以下の通りです。
・一定期間の固定金利
→安定した利回りが確保できる
・中途解約のリスク
→期間途中での解約は金利が低下する
・運用期間の設定
→修繕計画に合わせた期間設定が重要
決済用預金でのペイオフ対策
決済用預金は、ペイオフ制度の全額保護対象となる特別な預金です。
利息は付きませんが、金融機関が破綻しても預金額が全額保護される安全性が最大の魅力です。
以下のような特徴を持っています。
・全額保護の対象
→預金額の上限なく保護される
・無利息性
→利息は一切付かない
・高い安全性
→修繕積立金の基本的な保管先として最適
マンションすまい・る債の活用ポイント
住宅金融支援機構が発行する債券で、マンションの修繕積立金運用に特化した商品です。
10年満期の商品ですが、1年経過後は中途換金も可能という柔軟性を備えています。
主な特徴は以下の通りです。
・比較的高い利回り
→定期預金より有利な金利設定
・安全性の高さ
→住宅金融支援機構による優先弁済権付き
・融資特典
→将来の修繕工事融資で金利優遇が受けられる
積立型マンション保険の仕組みと特徴
火災保険の機能と資産運用の機能を併せ持つ金融商品です。
近年、修繕積立金の運用手段として注目を集めています。
以下のような特徴があります。
・保険と運用の一体化
→火災保険の保障と積立機能を同時に提供
・安定した運用収益
→一定の積立配当が期待できる
・中途解約の柔軟性
→必要に応じて解約も可能
複数金融機関を活用したリスク分散
複数の金融機関に資金を分散して預け入れることで、リスクを軽減する運用方法です。
ペイオフ制度の保護限度額を考慮しながら、効果的な分散投資を行うことが重要です。
リスク分散のポイントは以下の通りです。
・金融機関の選定
→信用力の高い複数の金融機関を選ぶ
・預入額の調整
→保護限度額を超えないよう配分する
・管理の効率化
→取引金融機関数は適正規模に抑える
ポートフォリオによる総合的な資産配分
複数の運用方法を組み合わせて、バランスの取れたポートフォリオを構築する方法です。
修繕積立金の性質や将来の資金需要を考慮しながら、最適な資産配分を決定します。
効果的なポートフォリオを構築するためには、まず短期・中期・長期の資金需要を明確に把握することが重要です。
これにより、必要な時期に必要な資金を確保できる運用設計が可能となります。
次に、異なる特性を持つ商品を適切に組み合わせることで、効果的なリスク分散を図ることができます。
安全性の高い商品を基本としながら、状況に応じて収益性のある商品も組み入れていきます。
また、運用状況を定期的に確認し、必要に応じて資産配分を見直すことも重要です。
社会経済環境の変化や修繕計画の進捗状況に応じて、柔軟に対応していくことが求められます。
修繕積立金の運用方法の選び方
修繕積立金の運用方法を選ぶ際は、マンションの規模や修繕計画、資金状況などを総合的に考慮する必要があります。
適切な運用方法を選択することで、将来の修繕工事に必要な資金を確実に確保することができます。
ここでは、運用方法を選ぶ際の重要な判断基準について解説します。
換金性を重視するか安全性を重視するかを判断する
運用方法を選ぶ際の最も基本的な判断基準は、換金性と安全性のバランスです。
緊急の修繕工事に備えた資金確保と、長期的な資産の保全を両立させることが重要です。
以下のポイントを考慮して判断しましょう。
・短期的な資金需要
→突発的な修繕への対応資金の確保が必要
・長期的な資産保全
→大規模修繕に向けた着実な資金積立が重要
・リスク許容度
→管理組合の方針や区分所有者の意向を反映
積立金額に応じた適切な運用先を選定する
修繕積立金の総額や月々の積立額に応じて、最適な運用方法は異なってきます。
特に、ペイオフ制度の保護限度額を考慮した運用先の選定が重要となります。
積立金額による運用方法の選定では、以下の要素を検討します。
・総資産額の把握
→現在の積立総額と今後の積立予定額を確認
・金融機関の分散
→ペイオフ制度の限度額を考慮した配分
・運用商品の組み合わせ
→積立金額に応じた効率的な運用構成
修繕時期に合わせて運用商品を組み合わせる
長期修繕計画に基づいて、修繕工事の実施時期に合わせた運用商品の選択が必要です。
計画的な資金確保と、必要な時期に必要な額を用意できる運用設計が求められます。
修繕時期に応じた運用商品の選択では、段階的なアプローチが効果的です。
短期的な修繕対応のために、普通預金や決済用預金で一定額を確保しておく必要があります。
中期的な計画修繕に向けては、定期預金やマンションすまい・る債を活用することで、適度な運用収益を得ながら、必要な時期に確実に資金を確保することができます。
さらに、長期的な大規模修繕に向けては、積立型保険や長期運用商品を組み入れることで、より効率的な資金計画を実現することが可能です。
このように、修繕時期に応じた適切な運用商品の組み合わせにより、計画的な資金確保を実現できます。
このように、様々な要素を総合的に判断しながら、マンションの状況に最適な運用方法を選択することが重要です。
修繕積立金の運用を始める5つのステップ
修繕積立金の運用を開始するには、管理組合として適切な手順を踏む必要があります。
運用方針の決定から実際の運用開始まで、区分所有者全体の合意形成を図りながら進めていくことが重要です。
ここでは、運用を始めるための具体的な5つのステップを解説します。
STEP1.理事会で運用方針の原案を作成する
修繕積立金の運用は、まず理事会での検討から始まります。
理事会メンバーで十分な議論を重ね、具体的な運用方針の原案を作成します。
大変・・・
運用方針の原案作成では、以下の項目を明確にする必要があります。
・運用目的の設定
→安全性と収益性のバランスを明確化
・運用対象の選定
→具体的な運用商品の組み合わせを検討
・リスク管理方針
→ペイオフ対策などのリスク管理手法を決定
STEP2.運用商品の具体的な内容を調査する
選定候補となる運用商品について、詳細な情報収集と分析を行います。
必要に応じて、金融機関や専門家への相談も検討します。
調査の第一歩として、各運用商品の利回り、リスク、換金性などの基本条件を詳細に確認することが重要です。
これらの情報は、金融機関への直接の問い合わせや商品説明資料の精査を通じて収集します。
また、申込から運用開始までの具体的なプロセスについても把握が必要です。
各商品で必要となる手続きや所要期間は異なるため、詳細な確認が欠かせません。
さらに、契約に必要な書類や手続きについても事前に確認します。管理組合として必要な承認手続きや提出書類を把握し、円滑な運用開始に向けた準備を進めることが重要です。
STEP3.区分所有者への説明会を実施する
運用方針の原案について、区分所有者全体への説明会を開催します。
丁寧な説明と質疑応答を通じて、運用方針への理解と合意を得ることが重要です。
説明会では以下の点に注意を払います。
・運用の必要性
→なぜ運用が必要なのかを明確に説明
・リスクとメリット
→予想されるメリットとリスクを具体的に提示
・質問への対応
→区分所有者からの疑問に丁寧に回答
STEP4.総会で運用方針を決議する
区分所有者の意見を反映した運用方針を、総会での決議にかけます。
総会での承認を得ることで、管理組合としての正式な運用方針が確定します。
総会での決議に向けて、以下の準備が必要です。
・議案書の作成
→運用方針の詳細を分かりやすく記載
・決議要件の確認
→必要な賛成数などの要件を事前確認
・資料の準備
→具体的な数値やシミュレーション結果の提示
STEP5.運用規約を整備して運用を開始する
総会での承認後、具体的な運用規約を整備し、実際の運用を開始します。
運用開始後の管理体制も同時に確立することが重要です。
運用開始に向けて以下の準備を行います。
・運用規約の整備
→具体的な運用ルールを文書化
・管理体制の構築
→運用状況の確認と報告の仕組みを確立
・記録管理の方法
→運用状況を適切に記録・保管する方法の決定
このように、段階的なステップを踏むことで、安全で効果的な運用を開始することができます。
修繕積立金の運用状況を確認するチェックリスト

修繕積立金の運用を開始した後は、定期的に運用状況を確認し、必要に応じて見直しを行うことが重要です。
適切なチェック体制を整備することで、安全で効率的な運用を継続することができます。
ここでは、運用状況の確認に必要な具体的なポイントを解説します。
運用状況の定期的な見直しポイント
運用状況の確認は、最低でも四半期に1回は実施することが推奨されます。
定期的なチェックにより、早期に課題を発見し、対応することが可能となります。
以下が主要な確認ポイントです。
・運用実績の確認
→各運用商品の利回りと運用残高をチェック
・リスク状況の評価
→ペイオフ制度の観点から預入金額を確認
・運用方針との整合性
→決定した運用方針から逸脱していないか確認
収支バランスの確認と改善方法
修繕積立金の収支状況を定期的に確認し、必要に応じて運用方法の見直しを行います。
収支バランスの確認は、将来の修繕計画との整合性を図る上で重要です。
収支状況の確認においては、まず月々の積立金の入金状況を正確に把握することが基本となります。
入金の遅延や未納がないかを確認し、必要に応じて適切な対応を取ることが重要です。
次に、運用による収益が目標に対してどの程度達成できているかを評価します。
期待された運用収益が得られているか、また運用方針に沿った結果が出ているかを詳細に分析します。
さらに、予定されている修繕工事費用との整合性を確認することも重要です。
将来の支出予定に対して十分な資金が確保できる見通しかどうかを継続的に評価し、必要に応じて運用方針の見直しを検討します。
緊急時の資金調達手段の確保
予期せぬ修繕工事や災害対応のため、緊急時の資金調達手段を常に確保しておく必要があります。
定期的に資金調達の可能性を確認し、必要に応じて対策を講じます。
緊急時対応の確認ポイントは以下の通りです。
・流動性の確保
→すぐに引き出せる資金の確保状況を確認
・融資枠の設定
→金融機関との融資枠の設定状況を確認
・代替手段の検討
→必要に応じて新たな資金調達手段を検討
このように、定期的なチェックと適切な対応により、安定的な運用を維持することができます。
流動性は高くないとまずいよね・・・
まとめ:修繕積立金の安全で効率的な運用のために
修繕積立金の運用では、何よりも資金の安全性を最優先に考える必要があります。
その上で、決済用預金の活用や複数の金融機関への分散投資など、ペイオフ対策を適切に講じることが重要です。
運用方法の選択では、普通預金、定期預金、マンションすまい・る債などから、自分たちのマンションに最適な組み合わせを見つけることが求められます。
運用開始後も定期的な状況確認と見直しを行い、社会経済環境の変化や修繕計画の進捗に応じて柔軟に対応していくことが大切です。
必要に応じてマンション管理士などの専門家に相談することで、より安全で効率的な運用を実現できるでしょう。
