この記事を書いた人
船橋寛之(ふなばしひろゆき)
1984年生まれ。
ドイツ育ちの不動産投資家。
不動産投資歴16年。
立教大学 経済学部卒。
リーマンショックの時に新卒で区分マンションを購入し、東京23区を中心に最大6棟55部屋を所有。
大和証券、大和総研に11年間勤務後、不動産コンサルタントとして独立。
現在は年間20億円以上の「非公開物件」仲介を行う。強みは「物件情報力」で、経験を活かしてセミナー講師や執筆活動にも携わる。
私生活では子供3人を育てる「ほぼ主夫」。
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賃貸・アパート経営において、土地や建物にかかる固定資産税は賃貸オーナーが負担する税金です。
賃貸経営するために欠かせない支出である固定資産税は、経費計上が可能であり、適用条件を満たせば減税が受けられます。
本記事では、固定資産税の計算方法や軽減措置、さらには賃貸経営における固定資産税以外の税金の節税ポイントを解説します。
Contents
そもそも「 固定資産税」とは?
固定資産税とは、固定資産を所有している人に課される地方税です。
賦課期日である1月1日時点での所有者や利用状況に応じて、納税義務者や課税額が決定されます。
これが重たいんだよね~
毎年4月~6月頃に固定資産が所在する市町村から固定資産税納税通知書が送付され、一括納付か年4回の分割納付が選択できます。
まずは、固定資産税が課税される対象や、固定資産税額の計算方法を確認しておきましょう。
固定資産税の課税対象
固定資産税が課税される固定資産は、大きく分けて次の3種類です。
自動車や無形固定資産などは固定資産税の課税対象になりません。
不動産の登記簿や固定資産課税台帳に所有者として記載されている個人や法人が、固定資産税の納税義務者となります。
固定資産税の計算方法
固定資産税の計算方法は以下のとおりです。
- 固定資産税の税額=固定資産の評価額(課税標準額)×標準税率1.4%
固定資産税の評価額は、土地と家屋とで別々に算出されるため、固定資産税も土地と家屋それぞれに税額が出されます。
土地の固定資産税評価額は、公示地価の70%が目安です。
建物の固定資産税評価額は、再建築価格方式で求められます。
新築した当初であれば、家屋の建築費の50~70%が固定資産税評価額の目安です。経過年数ごとに経年減点補正率を掛け合わして、評価額が算出されます。
正確な固定資産税評価額を知るには以下の3つの方法があります。
固定資産税の標準税率は1.4%ですが、財政上の必要に応じて市町村の判断により標準税率より上回る場合もあります。
RC物件なんかは特に注意だよ!
参考:総務省「固定資産税」
参考:総務省「都市計画税」
賃貸・アパート経営の固定資産税は「経費」扱いになる
アパート経営において、所有するアパートや土地に課税される固定資産税は、経費計上が認められます。
賃貸経営の際に経費として認められる費用は、賃貸経営に直接関係する費用です。
アパートは賃貸経営に欠かせない資産であり、アパートを所有するうえで必須の支出である固定資産税は、必要経費として扱います。
また、固定資産税は土地や家屋の所有者に課される税金です。
実際にアパートに居住する借主ではなく、アパートを所有する貸主が固定資産税を支払わなければなりません。
賃貸・アパート経営における固定資産税の軽減措置
固定資産税には、課税額が減額される軽減措置が設けられています。
賃貸経営するための不動産が適用対象となる軽減措置には、住宅用地の軽減措置や、新築住宅の減額制度があります。
軽減措置の適用対象となる場合、固定資産税の節税が可能です。
賃貸経営における固定資産税の軽減措置を、土地と建物それぞれに分けて解説します。
土地に関する軽減措置
賃貸経営するためのアパートが建つ土地は、「住宅用地の特例」が適用されます。
住宅用地の特例とは、戸建てやアパートなどの住宅を建てた土地に適用される減税制度です。
条件に該当する住宅が建つ土地は、固定資産税額を計算する基となる課税標準額が以下のように減額されます。
(参考:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|住宅用地の特例措置」)
特例が受けられる住宅用地として認められる敷地は、以下の要件を満たしたものです。
(参考:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|住宅用地とは」)
複数の住戸をもつアパートやマンションといった共同住宅であれば、「戸数×200平方メートル」までが軽減措置の対象となります。
したがって、アパート経営ではほとんどのケースにおいて、敷地全体で住宅用地の特例が受けられます。
建物に関する軽減措置
建物の固定資産税が軽減される措置としては、「新築住宅の減額措置」があります。
新築した建物が以下の床面積要件に該当する場合、対象となる建物にかかる固定資産税が2分の1に減額されます。
(参考:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」)
固定資産税が2分の1に減額される範囲は、居住部分の床面積120平方メートルに相当する部分までが上限です。
適用対象となる住宅であっても、120平方メートルを超える部分は減額されません。
減額が適用される期間は、住宅の種類によって以下のように定められています。
(参考:総務省「固定資産税|税額の計算方法」)
長期優良住宅の耐火基準を満たすマンションであれば、減税期間が7年間も続くため、長期にわたりコストを抑えられます。
賃貸物件と更地や空き家の固定資産税の違い
不動産にかかる固定資産税には、土地や建物それぞれに軽減措置があります。
軽減措置には適用要件があるため、土地や建物の利用状況によって固定資産税の課税額は変わってきます。
敷地に建物が建っていない更地や、管理状態の悪い空き家が建つ土地、賃貸物件が建つ土地とで、固定資産税の税額がどのように変化するかを見ていきましょう。
賃貸物件より更地のほうが固定資産税は高くなる
土地に課税される固定資産税は、住宅が建つ土地よりも、なにも建っていない更地のほうが3~4倍ほど高くなります。
固定資産税は、「固定資産税評価額×税率1.4%」で計算されるのが基本です。
しかし住宅が建つ敷地であれば、住宅用地の特例によって、固定資産税評価額が6分の1もしくは3分の1に軽減されます。
アパートのような複数の住戸をもつ共同住宅の場合、戸数が多いほど小規模住宅用地として認められる面積は拡大します。
住宅用地の特例が受けられない更地の場合、固定資産税は通常どおりの課税額です。
負担調整が入るため、固定資産税評価額の70%程度が課税標準額となります。
そのため、小規模住宅用地として固定資産税評価額を6分の1に減額された場合と比べると、更地の固定資産税は3~4倍になることが多いです。
管理状態が悪い空き家の固定資産税は高くなる
固定資産税の節税のために空き家を残すケースも多いですが、空き家を放置していると更地よりも高い固定資産税が課税されるかもしれません。
空き家の管理が不十分であると、周辺の環境や住民に危険や悪影響を及ぼす恐れがあるとして、行政から「特定空家等」に指定される恐れがあります。
特定空家等に指定されると、その敷地は住宅用地の特例を受けられなくなります。
さらに、空き家であっても建物に対する固定資産税は支払わなければなりません。
空き家を適切に管理できなければ、更地よりも高い固定資産税を支払わなければならないケースもあることを理解しておきましょう。
賃貸経営は節税につながる土地活用法
更地や空き家を所有している場合、固定資産税の節税にはアパートやマンションによる賃貸経営が有効な手段です。
所有する土地に賃貸用アパートを新築すると、住宅用地の特例や新築住宅の減額措置が受けられます。
その結果、更地の土地よりも固定資産税が大きく減額されます。
土地に空き家を残しておくと、住宅用地の特例により固定資産税の節税は可能です。
ただし、空き家を適切に管理できなければ特定空家等に指定される危険性があります。
固定資産税の節税だけでなく家賃収入も手に入るのが、賃貸経営のメリットです。
不動産を所有するには税金を納付し続ける必要がありますが、土地を活用して収入が得られれば所有コストの削減が実現できます。
但し、建売業者の営業にのせられて、賃貸需要の無いエリアに高い建築費でアパートを作ってしまわないように気を付けましょう。
賃貸・アパート経営でかかる固定資産以外の税金
アパートやマンションなどの賃貸物件を経営すると、賃貸オーナーには固定資産税以外にも以下のような利益に対する税金が課されます。
- 個人事業税
- 所得税
- 住民税
- 消費税
これらの税金は、事業規模や収益、取引の種類によって課税の有無や課税額が変わってきます。
どのような場合にどのような税金が課税されるのか、賃貸オーナーに課税される税金を詳しく確認していきましょう。
個人事業税
賃貸経営で収益を得る場合、その事業規模によっては個人事業税を支払わなければなりません。
税金って高いよね~
個人事業税が課税されるのは、事業による所得が290万円を超える個人事業主です。
これに加えて不動産貸付業の場合は、以下のような貸付規模の基準を満たした事業者に個人事業税が課税されます。
(参考:東京都主税局「個人事業税|8.不動産貸付業と駐車場業の認定基準」)
個人事業税の納付先は、事務所や事業所が所在する都道府県です。
上記の基準を満たさないケースでも、認定基準を補完するルールが設けられている場合もあるため、実際に課税されるかどうかは納付先の自治体に確認するのが確実です。
不動産貸付業における個人事業税の税率は5%で、事業所得から事業主控除を差し引いた金額に税率を掛け合わせて算出します。
- 事業所得=事業で得た総収入-必要経費
- 個人事業税額=(事業所得-事業主控除290万円)×税率5%
確定申告もしくは住民税の申告を行っていれば、別途個人事業税の申告をする必要はありません。
所得税
賃貸経営によって得られた収益には所得税が課税されます。
家賃などの賃貸経営による総収入から経費を差し引いた利益は、不動産所得として確定申告しなければなりません。
不動産所得は、給与所得などのほかの所得と合計して所得税を計算する総合課税に分類されます。
所得税は、所得が多くなるにつれて税率が上がる累進課税制度であり、税率は5~45%です。
そのため、賃貸経営による所得が同額であっても、給与所得やその他所得の合計額によって所得税額は変わってきます。
また、給与所得以外の所得がない会社員の方であれば、不動産所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。
住民税
住民税も、所得税と同様に賃貸経営で得た利益に対して課税されます。
所得が増えるにつれて税率が上がる所得税に対して、住民税の税率は所得にかかわらず一律です。
(参考:総務省「個人住民税」)
住民税の所得割は、給与所得などのほかの所得をすべて合計した金額から、一定の所得控除を差し引いたものに課税されます。
自治体の財政状況などにより、自治体ごとに一定の範囲内で課税額を設定できるため、自治体によって住民税額が異なる場合があります。
消費税
アパート経営を行うオーナーは、消費税の免税事業者であることがほとんどです。
住居用の家賃や敷金、共益費などの賃貸経営による収入の多くは消費税が課税されないため、事業者として消費税を納める必要がありません。
一方で、事務所や店舗、駐車場などの賃料には消費税が課税されます。
課税取引による売上高が年間1,000万円を超えた場合に、翌々年に消費税の課税事業者と判断されます。
賃貸経営における固定資産税以外の節税ポイント
賃貸経営においては、固定資産税以外の税金についても節税対策をすることが大切です。
とくに収益に対して課税される所得税や住民税は、賃貸経営にかかる税金のなかでも大きな割合を占めます。
所得税や住民税は、適切な経費計上や控除によって不動産所得を圧縮することで節税につながります。
また不動産所得で赤字が出た場合は、そのほかの所得と相殺する損益通算も可能です。
賃貸経営における節税ポイントを詳しく解説します。
適切に経費計上する
賃貸経営では適切な経費計上が節税につながります。
所得税や住民税は、収入そのものではなく所得の金額に応じて税額が計算されます。
収入から必要経費を差し引いたものが所得であるため、経費を適正に漏れなく計上すると所得の圧縮が可能です。
賃貸経営の経費となるものには、以下のような費用が挙げられます。
- 賃貸管理を委託する管理費用
- 火災保険や地震保険の保険料
- 賃貸経営のための移動にかかる交通費
経費のなかでもとくに大きな割合を占めるのが、減価償却費です。
減価償却費は、建物や高額な設備の取得費用を、その資産ごとに定められた耐用年数に合わせて分割して費用計上するものです。
経年によって価値が変わらない土地は、減価償却できません。
アパートの減価償却費は以下の計算式で求められます。
- 減価償却費=アパートの取得費用×償却率
減価償却費を計上できる期間は、アパートの構造によって定められた法定耐用年数です。
アパート構造別の法定耐用年数と償却率は以下のとおりです。
(参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」、国税庁「減価償却資産の償却率等表」)
たとえば、取得費6,000万円の木造アパートを新築した場合、年間276万円の減価償却費を22年間にわたり計上できます。
取得する物件の減価償却費を事前に把握したうえで、賃貸経営のシミュレーションをしておきましょう。
青色申告制度を活用する
賃貸経営の確定申告は、青色申告を活用すると節税効果が高まります。
確定申告は、白色申告と青色申告の2つの申告方法があります。
白色申告は比較的簡単な記帳で申告できますが、青色申告には白色申告では得られないさまざまな節税メリットがあるのが特徴です。
- 青色申告特別控除により最大65万円の控除が受けられる
- 3年間まで赤字を繰り越せる
- 家族への給与を経費にできる
サラリーマンの方が副業で賃貸経営する場合にも青色申告は可能です。
ただし、65万円の青色申告特別控除を受けるには、賃貸経営が事業的規模と認められなければなりません。
(参考:国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」)
事業的規模に満たない場合は、青色申告をしても10万円の特別控除しか利用できません。
損益通算を利用する
賃貸経営において、損益通算の仕組みを使うと所得税を安く抑えられるケースもあります。
損益通算とは、賃貸経営で赤字が発生した場合に、その赤字をほかの所得から差し引ける制度です。
賃貸経営では、実際の支出を伴わない減価償却費の計上により、手元の現金は赤字ではないのに、会計上では赤字が出るケースも少なくありません。
副業で賃貸経営するサラリーマンの方であれば、賃貸経営で発生した赤字を本業の給与所得と相殺できるため、その分給与所得にかかる所得税の節税につながります。
まとめ
固定資産税とは、土地や家屋を所有する人に毎年課税される税金です。賃貸経営するうえで必要不可欠な支出であるため、経費計上が可能です。
固定資産税額は、「固定資産税評価額×1.4%」で計算されます。
賃貸用に取得したアパートやマンションは、住宅用地の特例や新築住宅の減額措置によって固定資産税が減税されるケースも多いです。
地方のRCなんかは家賃に対する固定資産税比率が高すぎるので要注意!
更地や空き家を所有している場合、その土地を活用した賃貸経営により固定資産税の節税が図れます。
賃貸経営には所得税や住民税などの税金もかかりますが、経費計上や青色申告によって課税額を抑えることも可能です。
所有している土地が、固定資産税の支払いだけが続くマイナスの資産となっているケースも多く見られます。
土地から収入を得る方法として、賃貸・アパート経営を検討しましょう。