この記事を書いた人
船橋寛之(ふなばしひろゆき)
1984年生まれ。
ドイツ育ちの不動産投資家。
不動産投資歴16年。
立教大学 経済学部卒。
リーマンショックの時に新卒で区分マンションを購入し、東京23区を中心に最大6棟55部屋を所有。
大和証券、大和総研に11年間勤務後、不動産コンサルタントとして独立。
現在は年間20億円以上の「非公開物件」仲介を行う。強みは「物件情報力」で、経験を活かしてセミナー講師や執筆活動にも携わる。
私生活では子供3人を育てる「ほぼ主夫」。
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住宅ローン完済時や不動産売却時、不動産を相続したときなどに必要な抵当権抹消手続きは、自分でもできるケースがあります。
抵当権抹消登記が遅れるとさまざまな問題が発生する可能性があるため、迅速な対応が肝心です。
この記事では抵当権抹消登記の必要性および、登記を自分で行う方法と注意点を解説します。
ローンの完済が近い方や不動産の売却予定がある方、相続で土地や建物を引き継いだ方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
抵当権とは?抹消手続きが必要なケース
抵当権とは、資金を回収できなくなるリスクを軽減するために、お金を貸す側(債権者)が不動産に設定する権利です。
住宅ローンを借り入れると、ほとんどのケースで抵当権が設定されます。
住宅ローンを完済すると抵当権の効力はなくなりますが、自動的には削除されません。
抵当権が付いたままでもすぐに大きな問題が発生することはないものの、新たな住宅ローンが組みにくくなる、不動産の売却に支障が出るといったトラブルの要因となる可能性があります。
そのためローンを完済したら、なるべく早く抵当権抹消登記をすることが望ましいです。
ここではまず、抵当権の概要と抵当権抹消手続きが必要な5つのケースを見ていきましょう。
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抵当権とは
抵当権とは住宅ローンの契約にあたり、債権者(お金を貸す側)が購入する不動産を担保として設定する権利です。
担保とは、返済不能に陥ったときの保証として債務者(お金を借りる側)が債権者に差し出す資産のことを指します。
言葉が難しい・・・
住宅ローンを貸し出す金融機関にとって一番のリスクは、何らかの理由で債務者が返済不能に陥ることです。
そのような状況になっても資金を回収できるよう、債権者は抵当権を設定します。
住宅ローンの返済ができなくなったときには、金融機関は担保となる土地や建物を競売にかけ、売却代金をローンの返済に充てるのです。
抵当権は一般的な住宅ローンのほか、アパートやマンションなど投資物件の購入でも設定されます。
中には抵当権を設定しない無担保ローンもありますが、一般的な住宅ローンと比較し借入可能額が少なかったり、借入期間が短かったりすることは押さえておきましょう。
抵当権抹消手続きが必要なケース
不動産から抵当権を外すには、抵当権の抹消が必要です。
抵当権抹消とは、不動産に設定された抵当権登記を消すための登記手続きです。
抵当権が付いたままになっていると、今後の不動産売買や新規住宅ローン借入に影響が出る可能性があります。
予定している売買契約や融資の実行ができないと、大きなトラブルに発展するケースも考えられます。
トラブルの発生を防ぐためにも、抵当権が不要になったときには速やかに抹消手続きを進めることが重要です。
ここでは、一般的に抵当権抹消の手続きが必要な5つのケースを詳しく解説します。
住宅ローンの返済が完了した場合
住宅ローンの返済が完了したときは、抵当権抹消の手続きをするタイミングです。
長年返済してきたローンの完済は、誰にとっても嬉しいものです。
心理的・経済的な負担が減ることで、急ぎではないローン関連の手続きはつい後回しにしてしまうこともあるでしょう。
しかし抵当権抹消登記を行わないと、後述するさまざまな問題が発生するかもしれません。
問題が起きたときに慌てて手続きをしても、抹消が完了するまでには数週間かかるケースもあります。
いざというときに困らずにすむよう、ローンを完済したときには速やかに抹消登記を済ませておきましょう。
抵当権抹消登記には、住宅ローンを完済後に金融機関から送られる抵当権に関する書類が必要です。
抵当権抹消登記をスムーズに進めるには、手続きが完了するまで書類を紛失しないよう保管してください。
不動産を売却する場合
売却を検討している不動産に抵当権が設定されている場合も、抵当権抹消が必要です。
抵当権が付いたままの不動産は、ローンを完済し抵当権の効力がなくなっていたとしても、売却に支障が出る可能性があります。
なぜなら抵当権が付いたままの不動産は、本当にローンが完済されているのかがはっきりしないため、購入物件として嫌厭される傾向があるからです。
また、抵当権が付いたままの物件は住宅ローンを利用しての購入が難しく、買い手が付きにくいことも原因としてあげられます。
不動産を売却するタイミングとして考えられるのは、まとまった現金が必要になったときや、ライフステージの変化による住み替えなどです。
抵当権が残っていることで売却が進まないと、予定していた新生活がスタートできなかったり、必要資金が用意できなくなったりするかもしれません。
そうなると、思い描いていた人生設計が崩れる可能性もあります。
不動産の売却を検討しているのであれば、抵当権の有無を事前に確認し、抹消手続きをすることが重要です。
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不動産を相続した場合
不動産を相続したときにも、抵当権抹消の手続きを行いましょう。
相続が発生するときは、葬儀の手配をしたり、役所へ提出するさまざまな書類を用意したりなどやるべきことが多く、抵当権抹消登記は遅れがちです。
相続はやることが多いよね!
気持ちの面でも、相続した資産について考える余裕はないでしょう。
しかし引き継いだ土地や建物を、いつまでもそのままにしておくわけにはいきません。
遺された資産を有効に活用するためにも、できるだけ早く抹消登記を行ってください。
住宅ローンが完済されている不動産であれば、相続人による抵当権抹消の手続きが可能です。
相続人が複数いる場合は、相続人全員で手続きを進めてください。相続した不動産の住宅ローンが残っている場合は、抵当権抹消の手続きはできません。
抵当権を抹消するにはまず住宅ローンを完済し、抹消手続きを進めましょう。
なお、一般的に住宅ローンを借り入れるにあたっては、団体信用生命保険(団信)に加入します。
団信とは、住宅ローンの契約者に死亡や高度障害など万が一のことが起きたときに、住宅ローン残高をゼロにする保険です。
そのため、債務者の死亡により不動産を相続したときには、住宅ローンが残っていることはほとんどありません。
新たに融資を受ける場合
新たに融資を受ける場合も、抵当権抹消の手続きが必要です。
抵当権が付いたままの不動産は、住宅ローンの完済後であっても審査が通りづらくなる可能性があります。
担保となる不動産にすでに抵当権が付いていると、新たな融資の前にまずは前回のローンが完済されているかといった確認が必要です。
そのための手続きに時間がかかることはもちろん、結果次第では審査に通らず融資が受けられなくなるケースも考えられます。
融資が受けられなくなると予定していた資金の調達ができず、資金計画がうまく進まなくなるかもしれません。
新たに融資を受ける予定がある場合は、借入手続きをスタートさせる前に抵当権が抹消されているかを確認することが重要です。
抵当権が残っていたときには、新たな融資の相談をする前に速やかに抹消登記を進めましょう。
住宅ローンを借り換える場合
住宅ローンの借り換えを検討しているのであれば、併せて抵当権抹消の手続きをしましょう。
住宅ローンの借り換えは、一般的に以下の手順で行います。
- 借り換えを検討する金融機関に相談
- 新たな住宅ローン審査の申込
- 現在借入中の金融機関に一括返済の申込
- 新規住宅ローンの借入および登記抹消手続き
住宅ローンの借り換えではまず、借り換えを検討する金融機関で返済シミュレーションをとり、メリットがあると判断したときに住宅ローン審査を受けます。
そして審査通過後に、現在借入をしている金融機関へ一括返済を申し込む流れです。
住宅ローンの借り換えで重要なのは、新規住宅ローンの借入と既存ローンの一括返済および抵当権抹消手続きを原則として同日に行う点です。
抹消手続きがスムーズに進まないと、借り換え自体がストップしてしまう可能性もあります。
そうなると、予定していた条件での借り換えができなくなるかもしれません。
借り換え手続きを進めるにあたっては、一括返済時に登記抹消手続きに必要な書類を受け取れるかを、金融機関に事前に確認することが重要です。
抵当権抹消手続きをしないとどうなる?
抵当権の抹消は自動的には行われないため、不動産所有者自身もしくは司法書士に依頼して手続きをする必要があります。
しかし日々の生活が忙しいときには、抵当権抹消手続きをうっかり忘れてしまうかもしれません。抵当権抹消手続きを忘れると、ここで紹介する以下の問題が生じるケースがあります。
- 不動産売却が難しくなる
- 後の手続きに手間がかかる
- 新たなローンを組めなくなる
ここでは、それぞれのケースが発生したときにどのような不都合が起きるかを詳しく解説します。
不動産売却が難しくなる
抵当権抹消手続きが未済の場合には、不動産売却が難しくなる可能性があります。
なぜなら抵当権の登記が残っていると、買主への名義変更(所有権移転登記)ができないからです。
所有権移転登記ができなければ、不動産の売却は進められなくなります。
不動産の売却をスムーズに進めるには、事前に抵当権抹消手続きを済ませておきましょう。
なお、抵当権が残っていても不動産の売却ができるケースがあります。
売買契約日に抵当権が抹消されていなくても、引き渡し日(所有権移転日)に抵当権を抹消できるのであれば、不動産の売却は可能です。
抵当権登記が残っている不動産を売却するときには、売却までのスケジュールをしっかりと確認し、不動産会社や司法書士と相談しながら手続きを進めることが肝心です。
後の手続きに手間がかかる
抵当権抹消の手続きが遅れると、後に抹消しようとしたときに余計な手間がかかる可能性があります。
手間が増える主な原因は、以下のとおりです。
- 必要書類の有効期限が切れる
- 書類を紛失する
- 追加書類が必要になるケースがある
抵当権抹消に必要な書類の多くはローンを返済した金融機関から受領しますが、中には有効期限が設定されているものがあります。
有効期限が切れてしまうと、再発行の手続きが必要になり手続きの手間が増えます。
また手続きが遅くなると、書類を紛失してしまうかもしれません。書類を紛失した場合も、再発行の手続きが必要になり手続きの負担が増えます。
金融機関が発行した書類は、発行時の情報で作成されます。
そのため金融機関の合併や移転などで情報に変更があると、登記抹消にあたり追加書類の提出が必要です。
これらの手間を抑えるためにも、書類を受け取ったらできるだけ速やかに登記抹消手続きを進めましょう。
新たなローンを組めなくなる
抵当権が残っていると、新たなローンが組めなくなる可能性があることも知っておきましょう。
前の住宅ローンに設定した抵当権が残っているからといって、必ずしも新しい住宅ローンが組めないわけではありません。
法律上はすでに設定された抵当権の後に、新たに抵当権を付け住宅ローンを組むことも可能です。
ここで確認しておきたいのは、「抵当権は早く設定されたものから優先して弁済が行われる」点です。
そのため後から設定した抵当権は、ローンの残高によっては弁済を受けられないケースがあります。
これらの理由から、すでに抵当権が設定されている物件を担保とした住宅ローンは資金を回収できなくなるリスクが高いとされ、通常よりも審査が厳しく行われます。
審査結果によっては、住宅ローンの借り入れができない、希望金額の融資を受けられない、金利や借入期間などの借入条件が厳しくなる、といった可能性があることは押さえておきましょう。
抵当権抹消手続きを自分で行う方法と必要書類
抵当権抹消登記は、不動産所有者自身での手続きが可能です。
司法書士に依頼もできますが、1万円~2万円程度の費用がかかります。スケジュールに余裕があれば、自身で手続きを進めてもよいでしょう。
高くはないよね!
スムーズに手続きをするには不備がないよう必要書類を集め、申請書類を作成し速やかに法務局に提出することが重要です。
ここでは、抹消手続きに必要な5つの書類と、手続きの流れを解説します。
1.抵当権抹消手続きに必要な書類を準備する
抵当権抹消手続きに必要な書類は、以下の5つです。
- 抵当権抹消登記申請書
- 登記済証・登記識別情報
- 登記原因証明情報(解除証書・弁済証書等)
- 委任状
- 資格証明書(代表者事項証明書等)
書類の多くは、住宅ローンの完済によって抵当権の効力がなくなった時点で、金融機関から送られます。
しかし中には、法務局での入手が必要なものもあります。必要書類を事前に確認し、計画的に揃えましょう。
抵当権抹消登記申請書
抵当権抹消登記申請書は、管轄法務局で抵当権抹消申請をする際に必要な書類です。
法務局窓口もしくは、法務局ホームページから入手しましょう。
抵当権抹消登記申請書には、不動産番号や不動産の所在などを登記事項から正確に転記しなければなりません。慌てて作成し不備がでることがないよう、抵当権抹消の手続きを考えているのであれば前もって計画的に準備することが重要です。
記入例は法務局ホームページに掲載されているため、事前に確認しておきましょう。
登記済証・登記識別情報
登記済証および登記識別情報は、不動産に抵当権を設定したときに発行される書類です。
ローンを完済すると、ローンの借入をしていた金融機関からローン契約者に送られます。
2006年以前に発行されたものは登記済証、2007年以降に発行されたものは登記識別情報と呼ばれます。
登記済証および登記識別情報は、再発行ができません。
大切にしないと!!
紛失したときには、法務局からの事前通知による本人確認または、司法書士や公証人による本人確認情報の作成といった手続きが必要になります。
登記済証または登記識別情報を受け取ったら、紛失しないよう管理することが重要です。
登記原因証明情報(解除証書・弁済証書等)
登記原因証明情報(解除証書・弁済証書等)とは、住宅ローンを完済したことを通知する書類です。
解除証書や弁済証書、放棄証書など抵当権を抹消する原因が記載されており、ローン完済後に金融機関から送付されます。
登記原因証明情報は一般的に、いくつかの項目が空欄の状態で送られます。
不備なく記載するには、法務局窓口で相談しながら書き込むと安心です。
委任状
委任状とは、抵当権者となっている銀行などの金融機関が、不動産所有者に登記抹消手続きを委任するための書類です。
本来であれば抵当権抹消手続きは、債権者である金融機関と不動産の所有者が、共同で申請しなければなりません。
しかし実際には不動産所有者のみで行われるため、金融機関の同意を証明するために委任状が必要になります。
委任状は、住宅ローン完済後に金融機関から送付されます。
登記原因証明情報と同様に一部が空欄になっているため、記入に不安がある場合は法務局で確認しながら書類を仕上げましょう。
資格証明書(代表者事項証明書等)
抵当権者が金融機関等の法人の場合、発行から3ヵ月以内の資格証明書(代表者事項証明書等)が必要です。
資格証明書は金融機関から送付されるため、受け取ったら速やかに手続きを進めることが肝心です。
なお2015年11月以降、資格証明書の提出は必須ではなくなりました。
抵当権抹消登記申請書に12桁の会社法人等番号を記載すれば、資格証明書の提出は不要です。
会社法人等番号がわからないときには、住宅ローンを借り入れている金融機関に確認すればすぐに用意できます。
2.抵当権抹消登記申請書類を作成する
必要書類が揃ったら、抵当権抹消登記申請書類を作成しましょう。
作成は、オンラインもしくは書面のどちらかで行います。
時間や場所に関わらず、インターネット上で書類の作成から申請までを完了したい方は、オンライン申請を検討しましょう。
書類の作成に不安がある方は、法務局で相談しながらの作成が便利です。
法務局での相談は事前予約制で、持ち時間は20分です。
あらかじめ申請書や提出書類に目を通し、疑問点や不明点などを明確にしておくと、スムーズな相談と申請書の作成ができます。
3.管轄の法務局へ書類を提出する
必要書類を揃え申請書類の記入が終わったら、管轄の法務局へ書類を提出しましょう。
提出は、以下のいずれかで行います。
- オンライン
- 郵送
- 法務局窓口
オンラインおよび郵送で申請する場合、書類や手続きに不備があったときには補正の連絡が来ます。
補正は法務局で行う必要があるため、申請書類に使用した印鑑を持って手続きに行きましょう。
法務局窓口で申請するときには、その場で不備の確認ができるため補正が発生する可能性は低くなります。
補正の連絡がないときには登記完了予定日以降に法務局に出向き、登録完了証を受け取ってください。
抵当権抹消手続きを自分で行う際にかかる費用
抵当権抹消登記にあたっては登録免許税および事前調査費用、事後謄本費用、雑費がかかります。
費用の額は登記申請を行う不動産の数にもよりますが、2,000円~5,000円程度です。
大きな金額ではありませんが、手続きで慌てずにすむよう事前に確認しましょう。
登録免許税
登録免許税とは、登記の申請に必要な税金です。
登録免許税額は、不動産1個につき1,000円です。抹消登記を行う不動産が20件を超えるときには、税額は一律2万円になります。
一戸建てで土地と建物の両方の抵当権を抹消するときには、それぞれに登録免許税がかかるため、税額は2,000円(1,000円×2個)です。
また、1つの建物が2つの土地にまたがっている場合などは、それぞれの土地に登録免許税がかかる点には注意が必要です。
登録免許税は、収入印紙を貼り付けた用紙を抵当権抹消登記申請書と併せて提出して納めましょう。
事前調査費用
事前調査費用とは、抵当権を抹消したい不動産の登記内容を確認するための費用です。
登記内容を確認するには、登記事項証明書を取り寄せます。登記事項証明書の取得にかかる費用は、取得方法によって以下のように異なります。
- 法務局窓口で請求:600円
- オンラインで請求し最寄りの登記所や法務局証明サービスセンターで受け取る:480円
- オンラインで請求し郵送で受け取る:500円
法務局窓口の取扱時間は、平日午前8時30分〜午後5時15分です。
オンライン請求は、平日午前8時30分〜午後9時まで可能です。
参考:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
事後謄本費用
事後謄本費用は、抵当権抹消登記後に内容を確認するための費用です。
登記内容に間違いがないか、抵当権の抹消がしっかり行われているかを確認したい場合は、登記事項証明書を請求する必要があります。
確認不要であれば、この費用はかかりません。
登記事項証明書の取得には前項で解説したとおり、請求方法によって480円~600円の費用がかかります。
参考:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です 」
雑費
抵当権抹消の手続きを行うには、そのほか雑費も必要です。雑費には、法務局への交通費や書類の郵送代、オンライン申請にかかる通信費などが該当します。
補正により法務局に行く回数が増えたり、必要書類が増えたりすると雑費がかさむ可能性があります。
費用をできるだけ抑えたいのであれば、計画的に効率よく手続きを進めることが重要です。
自分で抵当権抹消手続きをする際の注意点
自分自身で抵当権抹消登記をしたいと思っても、自分では手続きができないケースがあります。
また抵当権抹消登記に加えて、住所変更登記が必要な場合もあります。
ここでは、自分で抵当権抹消手続きをする際の注意点を詳しく見ていきましょう。
自分では抹消手続きができないケースがある
抵当権抹消の手続きは不動産の所有者自身でできることが多いですが、以下に該当するケースでは自分での手続きができない、または困難です。
- 不動産を売却しローンを一括返済する場合
- 古い抵当権(休眠担保権)を抹消する場合
- 抵当権者が個人の場合
自分での抹消登記ができないときは、司法書士への依頼が必要になります。
抵当権抹消登記を考えているのであれば、まずは自分で手続きができる内容かを確認し、司法書士への依頼の有無を決めることが重要です。
不動産を売却しローンを一括返済する場合
不動産を売却し住宅ローンを一括返済する場合は、原則として不動産所有者による抵当権抹消登記は認められていません。
なぜなら不動産の売却代金でローンを完済するときには、売主から買主への名義変更と併せて抵当権抹消の手続きが行われるからです。
抵当権抹消登記が何らかの理由で完了しないと、住宅ローンが借りられないといった買主への不利益が発生する可能性があります。
これらのトラブルを防ぎ売買契約を確実に成立させるために、売却代金でローンを一括返済する際の抵当権抹消登記は司法書士が行うこととされているのです。
不動産の売却とローンの一括返済を考えているときには、不動産売却手続きと併せて司法書士への依頼も進めましょう。
古い抵当権(休眠担保権)を抹消する場合
古い抵当権(休眠担保権)の抹消も、自分での手続きが難しいケースの1つです。
休眠担保権とは、明治・大正・昭和といった古い時代から放置されている抵当権です。
休眠担保権は契約が古すぎるため債権者が誰かわからない、完済されているかが不明、当事者が亡くなっているといったケースも少なくありません。
抵当権抹消登記は通常、不動産の所有者と債権者が共同で行います。
しかし休眠担保権の場合、債権者と連絡が取れないことも多く、不動産所有者自身では抵当権抹消登記が進められない可能性があります。
休眠担保権の抵当権を抹消するには、供託や除権決定などが必要です。
供託と除権決定の概要を以下で確認しましょう。
【供託】
債権者と債務者が共同で抵当権等の登記抹消の申請ができない場合に、供託をしたことを証する書面を登記申請書に添付することで単独で抵当権の抹消を行う方法 被担保債権の弁済期から20年以上経過していることと、債務履行地の供託所に債権の元本および利息、債務不履行によって生じた損害金を供託する必要がある 【除権決定】 裁判所に公示催告の申立を行い、除権決定を得る方法 債務が消滅していることが確認できる書類(領収証や消滅時効の援用通知書など)が必要なことや、数ヵ月の期間がかかることから利用されることは少ない |
このように、休眠担保権を抹消するには手続きが複雑なだけでなく専門的な知識が求められます。
休眠担保権が見つかったときには、司法書士などの専門家に相談し手続きを依頼してください。
参考:法務省「供託Q&A 」
抵当権者が個人の場合
抵当権者が個人の場合も、司法書士に依頼したほうが手続きがスムーズに進むケースです。
一般的な抵当権抹消登記では、債権者は金融機関であることがほとんどのため、不動産所有者自身でも比較的簡単に抵当権抹消登記ができるでしょう。
一方、債権者が個人の場合には、抵当権抹消に必要な書類の作成ややり取りを、個人の間で行わなければなりません。
専門的な知識が必要になることも多いことから、司法書士に依頼したほうがスムーズに抹消登記を進められます。
なお抵当権者である個人が行方不明のときは、債権者と所有者が共同で抹消登記を進められなくなります。
この場合も、司法書士をはじめとした専門家に相談し、判断を仰いでください。
住所変更登記が必要なケースがある
引っ越しや結婚などの事情で、登記簿に記載されている所有者または抵当権設定者の住所や氏名に変更があったときには、抵当権抹消登記と同時に住所変更登記をする必要があります。
2021年の不動産登記法の改正により住所等の変更登記の申請が義務化され、2026年4月1日以降は住所や氏名に変更があった日から2年以内に、不動産の所有者はその変更の登記を申請しなければならないとされました。
そのため、抵当権抹消登記をする際に住所や氏名に変更があるときは、必ず変更登記も行いましょう。
住所の変更登記では、転居の経緯がわかり、現在の住所と登記簿の所有者住所とのつながりがつく住民票または戸籍の附票を用意します。
氏名の変更登記では、本籍の記載がある戸籍謄本および住民票が必要です。
抵当権抹消登記と変更登記を併せて行うと、必要書類が増え手続きが煩雑になることが考えられます。
不動産の所有者自身で登記を進めるのであれば、法務局の窓口相談を活用しましょう。手続きが難しいときには、司法書士に依頼するのも1つの方法です。
書類には有効期限がある
抵当権抹消登記に必要な書類の中には、有効期限が設定されているものがあります。
期限が切れてしまうと、再発行が必要になり予定していたスケジュールどおりに手続きが進まなくなるかもしれません。
また書類によっては、再発行にあたり費用がかかるものもあります。
費用や手間を抑えて抵当権抹消登記を進めるには、事前に計画を立て迅速に手続きすることが肝心です。
抹消手続きが難しい場合は司法書士への依頼がおすすめ
不動産所有者自身で抵当権抹消登記をするのは難しい、忙しくて手続きの時間が取れないといったときには、司法書士に依頼するのも1つの方法です。
必要書類を集め、法務局に出向き相談しながら申請書類を作るのは、思っているよりも大きな負担となります。
場合によっては、仕事や生活に影響が出るかもしれません。
できるだけ負担を抑えて抵当権抹消登記をしたいのであれば、ぜひ司法書士に相談してください。
なお司法書士に依頼をした場合、先述の費用のほか1万円~2万円程度の司法書士報酬が必要です。
まとめ
抵当権とは債権者が債務者に対し、購入する不動産を担保とする権利です。
一般的に住宅ローンを借り入れる際にはローンを貸し出す金融機関を債権者として、購入する不動産に抵当権が設定されます。
住宅ローンを完済すると抵当権の効力はなくなりますが、自動的に消滅はしません。
そのままにしていると新たなローンが組めない、不動産の売却が難しくなるといった問題が発生するため、抵当権抹消登記をしましょう。
一般的な抵当権抹消登記であれば、不動産の所有者自身でもできます。
必要書類を揃え申請書に記入し、法務局窓口またはオンラインで申請してください。
休眠担保権が付いている、不動産の売却代金でローンの一括返済をするなど手続きが複雑になるときは、司法書士に依頼すると安心です。
抵当権抹消登記が遅れると、書類の紛失や期限切れなどにより手続きの手間が増える可能性があります。
住宅ローンの返済が終わったときには、速やかに抵当権抹消登記も行いましょう。