不動産は、最もIT化が進んでいないと言っても過言ではない業界です。
エンジニアの方を中心に、不動産の透明性を確保すべく、IT化を進めようという動きはあります。
実際、いくつかのサイトで不動産の価格を、過去の販売事例などのデータから算出を試みているものもあります。
しかし、これらには限界があります。
IT化が進まない大きな原因は、不動産業界全体の習慣にあるのです。
恐らく今後も変わることはないでしょう。
不動産業界の透明性確保は難しいんだね
内容を5分動画にしました!
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区分マンションには一定の成果がある
区分マンションは、比較的簡単に相場を把握することができます。
それにも関わらず、不動産業者にぼったくられる人が後を絶たないのは、買主がそもそも何も調べないからです。
調べれば、それなりに相場を把握することができます。
区分マンションの考え方は大変シンプルで、同じ駅で似たような物件を探せばいいだけです。
インターネットを使って相場の検索ができます。
例えば、買おうとしている物件の概要を以下とします。
【検討中の物件】
蒲田駅
徒歩3分
家賃8.8万
築12年
販売価格2,830万円
【周辺の販売事例】
蒲田駅
徒歩5分
家賃8.7万
築15年
販売価格2,120万円
どうでしょうか。
この程度の情報であれば、ネット検索で十分に見つかります。
多少の築年数差や賃料差があるものの、類似物件が2,120万円で出ているのに、買おうとしている物件が2,830万である場合、簡単に割高だと判断できます。
区分マンションは、このように周辺で出ている情報を集めれば、なんとなく適正価格を出すことができるのです。
データ自体はネット上に転がっているため、それをかき集めて分析すれば、ザックリでも適正価格が出せるのです。
区分マンションは、ネット検索である程度の相場は把握できそうだワン!
このような試みは、いくつかのサイトで行われています(マンションマーケット、IESHILなど)。
しかし、残念なことに、精度はイマイチです。
結局のところ、転がっている情報が、「いつのものか」が重要です。
また、本当に売りに出されたのか、最終的に売れたのか、までは不透明です。
不動産は、時期によって価格が変動します。
安い時期と高い時期を平均して相場を出す場合は、「今」を適切に反映できていないケースが出てくるのです。
例えば、株式市場で考えます。
大和証券グループ本社の株価が、現在800円だとします。
数年前は400円台で推移していたため、適正価格は数年前の400円と今の800円を加味して550円と算出されたとします。
これでは今の適正価格を表していません。
今の相場は800円なので、800円前後の数字が出なくてはいけないにも関わらず、550円が適正、と判定されるのです。
不動産の価格判定サイトでは、似たようなことが起こっています。
今その値段で買うのは、業者でも不可能だよ!
といいたくなるような値段が算出されているのも珍しくありません。
相場全体が高いときは、どのサイトを見ても、現在の販売値を高く感じます。
相場全体が安いときは、その逆です。
IT化を進めている各サイトの課題は、経済指標をもう少し正確に判定できるようなアルゴリズムが構築できるかです。
現在IT化を進めようとしているいくつかの物件価格判定サイトは、まだまだ不正確であり、「今」の相場を把握するには不十分です。
しかし、これは今後改善されると考えられます。
区分マンションは、
・ある程度比較が簡単なこと
・データが転がっていること
から、アルゴリズムの精度さえ高めれば、適正価格を算出することは可能になると思います。
すると、透明性が増します。
区分マンションについては、一定の成果が出るものと予想します。
1棟物件の難易度は極めて高い
1棟物件は、区分マンションとは違い、土地が大きな影響を与えます。
場所が近くても接している道路の幅員などで、その価値も変わります。
1棟は専門性が高く、そこらに転がっているデータで論理的な価格を算出るのはほぼ不可能です。
1棟は難しいのか・・・眠たい・・・
精度を上げることも出来ないため、価格判定サイトの中でも、1棟を取り扱うところはないと思います。
1棟の評価は、難しく、感覚をつかむためには周辺との利回りを比較するのが早いでしょう。
利回りが高いから良い、というわけでもありません。
このため、単純な比較はできませんが、利回りで感覚をつかむことができます。
利回りが高い、ということは、その他でなんらかの問題を抱えているということです。
例えば、
土地の形状が悪い
前面道路の幅員が狭い
各部屋が極小
駅からやや遠い
などです。
利回りが高くなる理由を見つけてみると良いでしょう。
価値ある情報は表に出ない
1棟物件で顕著ですが、価値ある情報は表に出ません。
水面下で取引が成立しておしまいです。
不動産業界にある、表に出ている情報に価値はない、という文化から、本当に貴重な情報は表に出さずに決めてしまおう!ということになっています。
自社に顧客がいるとします。
提案する物件を探している中で、多くの人が目にできる状態の物件を、あえて勧めません。
せめて業者間だけで見れる物件情報を出すでしょう。
勿論、表に出ている物件が悪い、というわけではありません。
しかし、表に出ていない情報ほど、業者は一生懸命客付けするものなのです。
いい情報は表に出てこない!
分析とは、データがあって、それを解析することで可能になります。
本当の意味で価値のあるデータが存在しなかったらどうでしょうか。
いくら解析のアルゴリズムが優れていても、データそのものが存在しなければ役立たずです。
何も解析できません。
不動産業界は、情報を隠して取引することに価値のある世界です。
情報が隠れている以上、ベースとなるデータがないため、なかなかITを活用した分析はできないのです。
区分マンションと比較しても、1棟は顕著にこの傾向があります。
まとめ
よく、不動産業界の透明度を高めたい!という人がいます。
勿論、それ自体は素晴らしいことです。
エンジニアを抱え、価格を論理的に分析できるアルゴリズムを使って値段の計算をしようとしています。
区分マンションでは多少の成果が出ていますし、今後も改善していくでしょう。
しかし、1棟では難しいのです。
また、このような不動産業界のIT化を進めたいとする人とたちの多くは、不動産業界のプロではない傾向があります。
どれほど自分で仕入れをやってきているのか、投資家サイドであれば、どれほどの投資歴があり、どれほどの物件を持ているのか、など、どれをとっても、業界でやりこんできている、とは言い難い人が中心になっています。
それでは、やはり進みません。
不動産業界でやっている人は、別に透明化になんか興味はないのです。
相変わらず価値ある情報は、水面下だけで取引してしまいます。
いちいち表になんか出ないのです。
不動産業界のIT化は、まだまだ進まないでしょう。
そして、今後もあまり進まないと思います。