購入しても良いと考えられる投資信託の記事が出ていたのでご紹介します。
大手中堅銀行や証券会社が積極的に販売する投資信託は投資家目線でコストが高く、良い商品はありません。
このことは、以下の記事でも触れています。
投資家目線で商品が作られており、購入してみる価値はありそうなので関連記事をご紹介します。
日経新聞電子版
2017年9月15日掲載。
「スリッパに履き替える企業はダメ」 プロの銘柄選び
注目ファンドマネジャーに学ぶ勝利の方程式(1)「中小型株への投資、自国の株へのネーティブ運用、スモールチームによる運用の3つが運用成績の優れた投資信託の条件だ」
レオス・キャピタルワークス 運用部長 渡邉庄太さん。大和証券投資信託委託のアナリスト、ファンドマネジャーなどを経て2006年に入社。2015年から現職
こう話すのは、独立系資産運用会社レオス・キャピタルワークスで運用部長を務める渡邉庄太さん。3つの条件は、野村証券などでアナリストやストラテジストを歴任後、現在は自ら設立したパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの代表取締役を務める宮島秀直さんが著書『常勝ファンドの投資戦略』で提唱したものだという。それに共感した渡邉さんは、社長の藤野英人さんを含む6人の少人数で国内の中小型株中心の運用を手掛けるレオスが3つの条件を満たすと判断して転職した。
■最も重視するのは成長性
渡邉さんは「銘柄の選定で最も重視しているのは成長性だ」と語る。本業の儲けを示す営業利益の伸び率に着目し、年平均2割ほどの増益をコンスタントに続けられる企業を探す。2割程度の増益が続けば、株価もそれに追随して上がると期待できる。それ以上の急激な増益は長続きせず、反動で減益に陥り、株価も急落する恐れがあるので、注意が必要と話す。
中長期的に見れば株価は利益の伸び率に追随すると考えているが、短期的には株価は営業利益の推移と乖離した動きを見せることも多い。その場合は下図のように機動的に売買する。
投資した後、早期に株価が上昇した場合には一部を一旦売却して利益を確定する。逆に利益の伸びに反して株価が下落した場合は、再度の株価上昇が見込めるなら買い増す。2割の増益が続いているのに株価が想定したほど上がらない場合は「お宝銘柄」と捉えてさらに買い増す。最初の見立てとは異なり、営業利益の伸びが止まった場合は損切りもする。
■増益の情報をいち早く察知
レオスが投資する企業には「コンスタントな収益」以外の条件もある。それは「ビジョン・ミッション(経営理念)がある」「オーナーシップ(当事者意識)がある」「インセンティブ(楽しさややりがい)がある」こと。これらの要素を持ち合わせる企業はコンスタントに成長が可能で株価も上昇するので、結果的に大きなキャピタルゲインが得られると考える。
コンスタントに収益を伸ばす企業を探すといっても、既に長く増益を続けてきた企業や年度末決算で増益を果たした企業に投資するのでは遅過ぎる。目を付けるのは、四半期決算で前年同期や前四半期比に比べて大きく営業利益が伸びた会社だ。渡邉さんはスクリーニングを活用するほか、毎日午後3時以降に発表される適時開示情報を必ずチェックしている。時には20年分保有している『会社四季報夏号』のバックナンバーを取り出し、過去の相場や業績を読み返す。目で見た情報を頭にたたき込みながら、数字の変化を感じ取る。
その時点のPER(株価収益率)も確認する。「20倍台以下は割安銘柄、100倍超は異常値を付けた銘柄と考えられる。その間の30~100倍の銘柄が要注意だ。競合他社のPERと比較しながら、なぜ高いのか、なぜ低いのかを分析して、投資していいかどうかを見極める」
アンテナに引っかかった企業には、運用部チーム6人のメンバーが取材し、増益の背景を調べる。特需や前年の反動といった一過性の要因が多いが、中には画期的な新商品の発売や新しい顧客の獲得が要因になっているケースもある。こうした「構造的変化のとば口にある企業」こそが、この先コンスタントな営業利益の増加を見込める企業として投資先の候補となる。
取材では工場や店舗なども訪ね、現場の状況や従業員の言動を確認する。端々に現れる企業の本質を探るためだ。例えば、オフィスで靴をスリッパに履き替える習慣のある企業からは内向きの経営姿勢がすけて見える。社外の株主に報いようとする気持ちが薄く投資に向かないと考えられる。従業員の顔が暗く挨拶もしない会社は生き生きとやりがいを持って働く環境にないと判断できる。こうして細部まで観察し、投資の条件に合う成長企業の発掘を試みる。
メンバーが集めた情報は、毎週火曜日から金曜日に毎日開く「朝会」で報告し合う。レオスでは業種などの担当制を採用していない。メンバーはどの業種のどの企業でも取材して、投資候補として提案できる。全員で議論するが、最終的に投資を決断するのは、ファンドマネジャーだ。レオスが直販する公募型投信の「ひふみ投信」ならファンドマネジャーを務める社長の藤野さんが一人で決める。といっても、一部の銘柄、業種、テーマに集中的に投資することはない。組み入れ比率は高くても1銘柄2%程度。メンバーの提案は6~7割採用され、多様な業種、テーマに広く薄く分散投資する。こうして上げ相場で大当たりすることがない代わりに下げ相場でも大きな損を出さないのが、藤野流だ。
こうしたレオスの投資哲学を象徴する保有銘柄の一つが、防犯関連機器の販売を主力とするあいホールディングス(東1・3076)。積極的なM&A(合併・買収)で情報機器、セキュリティー機器、カード機器、建築設計などに事業を拡大して安定成長を続ける。近年の成長の柱は防犯カメラだったが、次の成長のタネも仕込み済み。「創業者の佐々木秀吉会長が時代の潮流を読み、ニッチ市場で高シェアを獲得できる事業を探す目利き力に優れている」と信頼を寄せる。
■時代のテーマにも関心払う
最近、新たに投資したのがコインランドリーのフランチャイズチェーンを展開するWASHハウス(東マ・6537)。「人手不足に悩む社会に新しいソリューションを提供する会社」とみて投資した。同社のコインランドリーは24時間年中無休営業だが、店舗は無人。監視カメラと遠隔操作システム対応の洗濯機、顧客が音声で本部と会話できるシステムなどを活用して無人店舗を遠隔管理する。同じ24時間営業でも、従業員が最低2人以上必要なコンビニエンスストアに比べて効率的だ。
IoTの他、自動運転やAI(人工知能)、インダストリー4.0、フィンテックといったテーマにも関心を持ち、関連する日本写真印刷(東1・7915)、山一電機(東1・6941)、イビデン(東1・4062)、東京応化工業(東1・4186)などにも投資する。
渡邉さんは時価総額300億円未満の企業を主な投資対象とした超小型株私募ファンドのファンドマネジャーを務める。シリコンウエハーの再生事業を手掛けるRS Technologies(東1・3445)、オフィスの床に使うタイルカーペットの再生をビジネス化したリファインバース(東マ・6531)などを組み入れる。
「朝会では運用メンバーから投資先の新たなアイデアが出続けている。投資環境は底堅い」と語り、運用成績のさらなる向上を目指す。
(ライター 小林佳代)