一般的には、不動産業者と媒介契約を締結し、レインズへの掲載をして販売を開始します。
しかし、不動産売買に慣れている投資家や不動産業者同士は、不動産の売り方が一般的な手法ではありません。
このような人たちは、「暗黙の一般媒介」と呼ばれる売り方で不動産を販売します。
情報を一切一般公開せずに、水面下で販売活動をしてもらうのです。
水面下で活動する業者同士のみに物件情報を開示し、自社顧客または会員に案内してもらうということです。
情報が広くインターネット含めて公開されないと、なんだか売れにくくなりそうな気がしますよね?
しかし、不動産業界では、逆です。
見えない情報の方が価値があり、売りやすいのです。
ワンルーム(区分マンション)であれば必要ないのですが、1棟であれば、どのようなロットでも、暗黙の一般媒介で売る方法は有効です。
※記事に記載されている売り方は、1棟の販売方法であり、ワンルーム系の物件は対象外です。
暗黙の一般媒介手順
暗黙の一般媒介は具体的に次の手順で進みます。
1.売りたいとする物件の売却を依頼(このとき間違えても特定の業者と専任媒介契約などを締結してはいけません)
2.業者がまずは自社の顧客に紹介可能か判断
3.自社で難しそうであれば、水面下で活動する取引先の業者に情報を出して客付けを依頼
4.各業者が自社顧客または会員に情報を配信
5.買主が現れ、条件がFIXできれば融資審査を行う
6.融資審査が通れば、売買契約を行う
7.引き渡し
このような流れで進みます。
物件は魅力的な条件であれば、1週間以内に複数の買付は入ります。
特に1棟の場合、融資が難しいため、「欲しい」と「買える」は全く別物です。
5件ほど買付が入って初めて成約の可能性があるくらいの感覚です。
買付すら入らない場合は、物件の条件が悪いことになります(ほとんどの場合は価格が高く、利回りが魅力的ではない)。
レインズの物件はあまりもの?
業者間では、積極的に物件情報をレインズ(不動産業者の物件情報サイト)へ掲載はしません。
暗黙の一般媒介で販売活動を行って、売れなかったものを最終手段としてレインズに掲載します。
このため、レインズの物件は余りものになります(一部値下げなどにより、余りものが優良物件に昇格することはあります)。
やはり業者間同士の物件売買を見ていれば、レインズに掲載されている物件情報は、高いな~と思うことがよくあります(利回りが低い)。
暗黙の一般媒介とは、販売の活動をしてね、と他業者を動かす行為です(この時点での媒介契約は締結しません)。
一般媒介ではなく専任媒介にしてしまうと、レインズへの掲載が義務化されるので、皆さん暗黙の一般媒介と呼んでいるのです。
形式上、物件の売却が決まりそうなタイミングで初めて一般媒介契約を締結するという流れになります。
売ろうと思う物件の前提条件
サラリーマンの不動産投資が流行ってから、知識と相場観の無い人が、1棟であっても物件の高値掴みをしまくっていました。
暗黙の一般媒介で業者を動かすには、物件を安く仕入れており、業者の直顧客に案内しても問題ないと思ってもらえるレベルの値段で出さないといけません。
要するに、素人投資家が買った物件は、そもそも暗黙の一般媒介で販売できるようなレベルの水準にない、ということになります(購入時期が良かった人は、例外的に暗黙の一般媒介を活用できる水準の人もいます)。
相場よりも高く買ってしまったから、残債も多く、よって売り出しの希望額も高め、という手の物件は、売れないので業者も動きません。
かなり情報力を持っている人で、
・不動産を少しでも安く購入できる
・購入時期がかなり良かった
という場合でない限りは、業者を動かして暗黙の一般媒介をしようと思っても、それは無理でしょう。
売れそうなエリアを、少ない残債で持っており、相場通りか相場よりやや安めで出す、ということができれば、暗黙の一般媒介のテーブルに乗ります。
どのようなケースにおいても、情報を出してから1週間以内に具体的な動きが出なさそうな物件は、販売価格が高い、といって間違いないでしょう(売りたい場合は値下げが必須です)。
情報を完全非公開にするメリット
なぜ暗黙の一般媒介は好まれるのでしょうか。
不動産業界では、多くの人が目にする情報に価値がないと思われがちです。
特にネットに出てしまっているような物件であれば、余りものと思われてしまう可能性があります。
情報がクローズドであればあるほど、その情報の価値が高まります。
そのことを不動産業者は理解しているので、クローズドの情報の方が、顧客向けへの案内に積極的になってくれます。
私個人的に考えても、ネット上でオープンになっている物件の案内はしません。
非公開であることを前提に、顧客案内は行いたいものと考えます。
この心理はどの業者にも共通しているので、情報を表に出さない方が、結果として売れる可能性が高まったりもするのです。
売却するときは、がむしゃらにレインズに掲載したりネット掲載するのではなく、水面下で売ってしまう方法を覚えておくと良いでしょう。
ただし、買値を間違えておらず、相場と比較しても悪くなさそうな金額で売れるというのは大前提です。
水面下で出して少しでも高く売ろう、というのは難しいのです。
水面下で難しい場合、最終手段としてレインズに掲載します。
レインズで引きがなければ物件の値段を下げないとまず売れません。
まとめ

不動産の売り方にもテクニックがあるのです。
販売方法としては、比較的不動産売買に慣れている上級者向きです。
私自身も最初のころは、早急にレインズに掲載してネット上にもUPしたほうが、多くの人の目に触れるので売れやすい!
と思って販売活動をしていた時もありました。
その時は、
物件の情報は表にあまり出さない方がいいですよ
水面下で売っていきましょう
と提案されても、ネットで公開してください!
といって公開させてしまっていました。
結果として当時の1棟は売れたので良かったですが、今考えてみると、誤った販売方法でした。
自分自身も物件を案内するようになったことで、暗黙の一般媒介の重要性に気が付いたのです。
