保有編

「満室経営」を続けるアパートオーナー…突如〈税務調査〉のターゲットになったワケ【税理士が解説】

事業を行っている限り、すべての人が税務調査の対象になります。賃貸経営を行う不動産投資家も調査の対象になりますが、一口にアパートオーナーといっても、税務署に「狙われやすい人」と「狙われにくい人」の傾向があるといわれています。

本記事では、多賀谷会計事務所の現役税理士・CFPの宮路幸人氏が事例を基に、アパートオーナーを対象とする税務調査の実態について解説します。

「修繕費」の申告が認められず「追徴課税」…税務署の目に付きやすくなるケースとは?

アパートオーナーであるAさん。入居者が途切れることなく満室の状態を保つなど、賃貸経営は順調でした。

しかし、築年数を重ね、建物や室内設備等の古くなってきたことなどから入居者募集に対する反応が鈍くなってきたように感じ、入居者が退去した際の入替のタイミングで大幅なリフォーム工事を行うことにしました。

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通常の室内クリーニング等のリフォームのほか、入居者の利便性を高めるために、

  • 内装の壁紙を以前よりグレードの高い壁紙に変更
  • ブロックキッチンをシステムキッチンに入れ替え
  • ガス給湯器を追い炊き機能付きのものに変更

などを実施したのです。多額のリフォーム費用がかかりましたが、これによって入居者募集への反応は改善し、借手もすぐ見つかるようになりました。

Aさんはこの年、リフォーム代を通常の修繕費として申告しましたが、翌年税務署から税務調査に伺いたい旨の連絡があり、調査に応じたところ、上記のうち①と②は修繕費ではなく、その資産の耐久性を高め、価値を増加させたものであるから、資本的支出に該当すると指摘を受けました。

資本的支出と判断された場合、その年の費用とはならず、固定資産の取得原価に加算されます。

その費用は耐用年数に応じて費用配分されることとなるため、修繕費とは認められず必要経費は圧縮され追徴税額を納付することとなりました。

不動産所得は、たとえば事業所得などに比べて必要経費と認められるものが限定されています。

それもあって、修繕費の額が前年比で大きく増加したような場合、税務署の目に付きやすくなり、税務調査に入られやすくなる傾向があります。

修繕費か資本的支出かの判断については実務上判断が難しいところですが、国税庁から「修繕費と資本的支出の区分(フロー図)」が公表されているので、参考にするとよいでしょう。

実はどちらも強制!?…「2種類」の税務調査の違いとは

税務調査は大きく、任意調査と強制捜査の2種類に分かれます。

強制捜査は、いわゆるマルサと呼ばれる国税局査察部が担当し、裁判所の令状を得て行うので、拒否することはできません。

以前公開された「マルサの女」という映画のような強制捜査を行います。ただし強制捜査はよほど悪質であると判断されない限り行われることはありません。

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もう1つは任意調査と呼ばれるもので、ほとんどの税務調査はこちらに該当します。

任意と聞くと調査を拒否できるのかな? と思う人もいるかもしれませんが、基本的には任意調査も拒否することはできません。

なぜなら国税庁の職員には、必要ならば、納税義務者に対して質問・検査できる質問検査権というものが与えられており、税務調査を行う権利が法的に認められているためです。

この任意調査を拒否した場合、国税通則法128条により1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる旨が規定されているため、任意調査といいつつも、実際はほぼ強制となっています。

アパートオーナーが調査の対象になるケースとしては、上記のように修繕費などの必要経費が大きく増加した場合や、雑費などの経費科目が他の不動産所得者に比べて不自然に多額な場合、新たに賃貸物件を購入して賃貸収入が大きく伸びた場合などが考えられます。

一般的に収入規模が大きくなるほど税務調査に入られやすくなるといえるでしょう。

税金対策の1つとして、アパートオーナーが新たに賃貸物件を購入する場合、新築よりも中古、また鉄筋よりも木造のほうが耐用年数が短くなり、多額の減価償却費を計上することができます。

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そのため、そのような物件をねらって購入するアパートオーナーもいます。

ただし、税金対策になるといっても、賃貸経営においては入居者の入りやすさ、ひいては空室率をどこまで低く抑えられるかといった点が重要になりますので、購入の際はよく検討すべきでしょう。

また、賃貸物件が経過年数により劣化し、将来的に賃料の低下が見込まれる場合などは、売却を検討するのもよいかもしれません。

売却して利益が出るような場合、譲渡所得税という税金を納めることになります。

取得後5年超の売却であればその差益に対し20.315%の税金がかかりますが、5年以内の場合、税率は39.63%とほぼ倍になりますので、売却のタイミングは慎重に検討すべきでしょう。

インボイス制度の開始でますます重要になるアパートオーナーの「税務の知識」

アパートオーナーが賃貸経営を行う場合、会計処理や税金等と深くかかわりあうことになります。

アパートオーナーとしては基本的には青色申告が有利となりますので青色申告を選択し、日々正しい記帳をすることが大切です。

一般的に、アパートオーナーは「不労所得で収入を得られて羨ましい」と周りから思われることも多いでしょう。

しかしながら、実際はそのオーナーの熱意等により所得が大きく左右されることも少なくありません。

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やはり借りている人が住みやすい環境を提供するオーナーが生き残っていくように感じます。

賃貸物件も、必要なメンテナンスや大規模修繕などをおろそかにしてしまうと、入居者数や賃料が低下していくことになります。

また、今年からインボイス制度が始まったこともあり、アパートオーナーには税務等の正しい知識がますます求められるようになっています。

いつ税務調査がやってきても慌てることのないよう、ポイントを押さえておきましょう。