コラム

定期券が映す職住近接 都市圏の私鉄、単価下落(日経新聞電子版)

定期券購入のデータから、都会寄りに人が住み始めているという事実が読み取れるようです。やはり都心寄りに住めるのであれば、そうするということです。

リモートワークがある程度可能な時代に突入してきていますが、face to faceのコミュニケーションはいつまでたっても重要であると考えます。すると、やはり田舎よりは都心で便の良いところに住みたいと思う人の割合は高いのではないでしょうか。不動産投資でも都心から離れる地方では苦しくなるばかりだと思います。

結局東京です。日本は東京が中心です。なんでも東京が先端です。私は不動産投資家としても、東京は絶対だと思っています。東京の不動産が魅力的です。

日経新聞電子版

2018年4月21日掲載。

都市圏で職住近接の動きが進んでいる。東京や大阪など都市部を地盤とする大手私鉄16社の1人当たり定期券利用額は過去10年で全社が下落。平均の単価は4%減となった。距離に連動する定期券単価の下落は、都心から郊外へと人口が移動した地価高騰時の「ドーナツ化現象」が、過去のものとなったことを映している。

私鉄各社の運賃収入は定期券を用いた「定期利用」と、観光やインバウンドを含む移動時の「定期外利用」に大別される。定期利用は人数ベースで約6割、運賃ベースで約4割を占める収益の柱。景気や天候にされない安定収益源だ。

東京、大阪、名古屋などを拠点とする大手私鉄を対象に、定期収入額を延べ利用者で割って単価を算出した。各社の定期収入額自体は増加傾向だが、単価下落が目立つ。定期券の料金は乗車距離にほぼ比例するため、単価下落は通勤・通学の距離が全体として短くなったことを示している。

京急川崎駅(川崎市)から1つの港町駅。駅前ではベビーカーを押す若い夫婦の姿が目立つ。東京駅から30分強の同駅の年間平均の乗降人員は、16年度に7138人と10年前から8割も増加した。

京浜急行電鉄は11年から6年かけて、合計1400戸のタワーマンション3棟を販売してきた。土地はかつて、日本コロムビアの工場があった場所だ。京急の原田一之社長は「以前の工業団地が住宅に様変わりし、品川や横浜などに通勤する人が増えている」と語る。特急を使えば品川までは約15分で着く。

だが、同じ京急線でも横浜駅以南では利用者の減少が目立つ。南端に近い浦賀駅(神奈川県横須賀市)では乗降人員が10年間で16%減少した。東京から70分強かかる。1970年代にはベッドタウンとして住宅開発が進んだ横須賀市では若年層の流出が深刻。京急全体の定期券単価は3.2%減少した。

背景には住宅需要の都心回帰に加え、バブル期に郊外に居を構えた中高年が定年を迎え、通勤事情が変わったことがありそう。1都3県の生産年齢人口(15~64歳)は東京都で過去10年に19万人増加したのに対し、周辺地域は95万人減少した。

関西の大都市でも同様の傾向がみられる。単価の下落率が最も大きかったのは大阪市―和歌山市などを結ぶ南海電気鉄道。10年間で5.3%下落した。沿線の大阪府南部や和歌山県内では利用者の減少が目立つ一方で、関西国際空港の周辺では雇用が増え、関空の隣駅、りんくうタウン駅の16年度の乗降人員は1万468人と45%増加した。(須賀恭平)