この記事を書いた人
船橋寛之(ふなばしひろゆき)
1984年生まれ。
ドイツ育ちの不動産投資家。
不動産投資歴16年。
立教大学 経済学部卒。
リーマンショックの時に新卒で区分マンションを購入し、東京23区を中心に最大6棟55部屋を所有。
大和証券、大和総研に11年間勤務後、不動産コンサルタントとして独立。
現在は年間20億円以上の「非公開物件」仲介を行う。強みは「物件情報力」で、経験を活かしてセミナー講師や執筆活動にも携わる。
私生活では子供3人を育てる「ほぼ主夫」。
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「当物件は、4年で減価償却できるので節税になります!」
「高所得者必見!築古アパート活用による節税対策」
と築古物件を勧められたことはないでしょうか。
確かに、短期間(4年間など)だけをみると、減価償却費が多額に計上できるので黒字を圧縮できます。
しかし、その後に起きる弊害をご存知でしょうか?
個人的には、節税を目的とした後ろ向きな不動産投資は、好きではありません。
また、個人の節税額が大きくなる年収と言うのは、数百万レベルではなく、1,800万円以上くらいを想像しておくと良いでしょう。
もしあなたの年収が1,800万円前後でないならば、この手法を検討するまでもありません。
不動産投資は、黒字を目指し、安定した黒字キャッシュフローで資産を増やす投資です。
赤字で節税!というものではありません。
不動産投資の「節税」には注意せよ!
減価償却費を計上すると赤字に転落する物件はダメ
築年数の古い物件は、確かに短期間で減価償却費を計上できます。
しかし、古いため、建物に大きな価値が残っているわけではありません。
減価償却費として計上できる建物価格は、土地と比べると小さくなります。
すると、思っていたほど計上できなかったりします。
実際に、古い物件であれば、土地建物比率で考えたとき、土地が80%で建物が20%というような比率になることも珍しくありません。
建物が20%以下になるケースも多くあります。
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特に、東京やその近郊など土地にそれなりの価値があるエリアでは、土地比率が高くなり、結果として建物の減価償却費がたいした金額にはならない、ということになるのです。
そもそもの話をします。
例え比較的大きく減価償却費を計上できたとしても、それによって不動産所得上赤字になるような物件であれば、買うべきではありません。
なぜならば、その物件の値段が高いということになるからです
不動産投資は、本来毎月のキャッシュフローだけでもご飯が食べられるくらいになるものです。
減価償却費を計上することで赤字に転落するような物件は、古い割に利回りが低かったり、毎月の手残りが十分ではなかったりしませんか?
減価償却費を計上して、本業から税金を還付することで収支をカバーするような発想は危険
不動産業者に踊らされて、自社再生物件のような高値物件を買わされるのがオチではないでしょうか。
利回り10%超え!
が本当に良いのかは、周辺の相場と比較し、出口までを考慮して勝てるのか、で判断しないといけません。
利回りや表面的な収支だけを見て判断していると危険です。
減価償却費を計上するメリット
減価償却費は、建物に対して計上できる費用であり、キャッシュアウトなく利益を圧縮できます。
【例えば】
年間家賃:80万円
各種費用(ローン金利、支払い手数料など):30万円
その他の各種費用が30万円であると仮定すると、この時点での利益は50万円(年間家賃 – 各種諸費用)です。
この50万円に対して税金がかかります。
各種費用は、経費計上できるものの、実際にキャッシュアウト(現金が外に出ていく)も生じます。
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減価償却費は、「建物の価値は一定期間で減少するもの」であるとのことから、これを経費とすることができます。
減価償却費が30万である場合、先ほどの利益50万円から30万円を差し引き、最終利益は20万円となります。
利益50万円に対してかかる税金よりも、20万円にかかる税金のほうが安いのは当然のことです。
さらに、ポイントは、その他費用のように、キャッシュアウトが生じないところです。
減価償却費の計上は、現金が外に出ていきません。
現金が出ていかないのに費用となる減価償却費は、魅力です。
減価償却費を計上するデメリット
減価償却費を計上すると、資産からその分を控除する必要があります。
これが減価償却費の計上が節税にならない理由になります。
控除の金額が大きいと、その分資産価値が下がります(簿価単価などともいいます)。
すると、売却時に譲渡益に対して税金を支払う必要が出てきてしまいます。
【例えば】
物件購入価格:1,200万円
先ほどの例の通り、減価償却費を毎年30万円計上するとします。
すると、物件価格である資産1,200万円から、毎年30万円控除する必要が出てきます。
10年後、税務上の資産価値は、900万円になっているということです。
当物件を10年後に1100万円で売却したとします。
すると、200万円が譲渡益(利益)になります。
本来であれば、1,200万円で購入した物件を1100万円で売却しているため、100万円の損失といいたいところですが、税務上は200万円の利益になります。
個人名義で購入している場合、5年未満での売却は短期譲渡となり、約39%の税金がかかります。
長期譲渡でも20%ほど税金がかかります。
今回の例でいうと、長期譲渡で約40万円を税金として支払うのです。
すると、過去計上してきた減価償却費による節税分を、ここで納めることになります。
減価償却費を大きく計上すると、売却時に思わぬ税金を支払うことになります。
年収が相当高く、既に多額の税金を支払っている方であれば、減価償却を最大限短期で計上し、税金の還付を受ける意味がある場合もあります。
冒頭で記述したような、年収1,800万円前後以上の層を指します。
長期譲渡で売却すれば、結果として税額を低く抑えることは可能になるからです。
しかし、やはり不動産投資の目的を、このような形で行う節税のツールとしては考えないほうが良いでしょう。
「節税」がアプローチの不動産業者は、たいした物件を売っていません。
自社で何らかの手を加えて価格の上乗せを行い、販売しているところではないでしょうか。
まとめ
減価償却費の計上は、税金を「今」払うのか、「後」で払うのかという違いがあるだけです。
売却時に結局のところ、譲渡益として税金を納める必要が出てきてしまうのです。
勿論、不動産業者の罠にはまり、高く買い過ぎてしまい、減価償却費を計上してもなお売却時に値下がっているようなケースもありますが、適切な価格で不動産を購入できていれば、税金を先送りしているだけの行為になります。
よって、減価償却費は過度に計上するのではなく、適度に計上し、売却時には譲渡益に対する税金がかかることを理解しておいて下さい。