不動産業者が作成する収支計算書やシミュレーションは、都合の良いように作られていることをご存じでしょうか。
簡単に言うと、収支計算書とシミュレーションはデタラメなのです。
デタラメでも法律的には全く問題ないのです。
不動産業者が作成する資料をそのまま信じて不動産を購入するような人は、成功しません。
どのようなポイントに気を付けるべきなのでしょうか。
—書籍より抜粋—
[書籍のメール便同梱は2冊まで]/やってはいけない不動産投資[本/雑誌] (朝日新書) / 藤田知也/著
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カモは目先の収支しか見ない
「価格が高くても、銀行返済分を差し引いても収支がプラスになる試算表を無理やり作って、『キャッシュフロー、プラスですから』って売り込むんスよ。
そこに『家賃保証つけますから』『35年のローン期間中は保証しますんで』『絶対にマイナスになりませんから』と言っちゃえば、客は細かいとこ、ほとんど見ないスから。目先の収支だけ見て、保証しますと言われれば安心する」。
物件価格を大幅に吊り上げた結果、収支を無理やりプラスにするには、保証する家賃収入も異様に高くしないといけない。
収支計算書を悪意を持って作ることは可能なのです。
その大半は、本来取れるであろう家賃よりもはるかに高い家賃設定をすることです。
安易に信じて購入すると、買ったとで痛い目を見ることになります。
Contents
収支計算書・シミュレーションのチェックポイント
ほとんど間違いなく、不動産業者が作成する収支計算書・シミュレーション通りにはなりません。
買った後に、
・思ったよりも黒字にならない
・思ったよりも赤字が大きい
という状況になります。
なぜでしょうか。
それは、物件を紹介する時の数字を、見栄え良く作るからです。
見栄えの良い作りにするのは、簡単です。
・支出を一部載せない
・家賃の設定が甘い
たったこれだけのことで、収支計算書の見栄えは良くなります。
収支計算書は、あくまでシミュレーションなので、購入後にそれが違っていたとしても、不動産業者の責任を問うのは難しいでしょう。
確認すべきポイントは、次の通りです。
現在の家賃
家賃は、不動産の収入源です。
物件が本来取れる家賃よりも高い設定で収支計算書が作られているとしたら、非常に危険です。
購入しようとしている物件の部屋を、
「現時点で募集したらいくらになるのか」
という視点で確認してください。
空室の場合は、想定賃料が適切であるか、確認してください。
サブリースの場合は、特に注意が必要です。
サブリースというブラックボックスな制度を悪用して、意図的に高い家賃を保証しているケースがあるからです(事例は、以下参照)。
家賃の下落率
家賃の下落率も大変重要です。
長期の収支計算シミュレーションがある場合、家賃の下落率がどの程度になっているのか、確認してください。
家賃下落率で、その不動産業者の資質がわかります。
家賃の下落率がないような、最悪な収支計算シミュレーションもあります。
完全なレッドカードです。
購入した時点と、購入してから20年後で、同じ家賃が取れるはずはありません。
ここまでくると、投資家をバカにしていますね(実際にそのようなシミュレーションを出す不動産業者は存在します)。
家賃の下落率を考慮せずに不動産を購入してしまうと、数年ほど経過したあたりから収支計算は狂い始めます。
購入時に出された収支計算書は、今後を踏まえて「最高の収支」なのです。
家賃は、築年数と共に下落するので、収支計算書の数字は悪化する一方です。
「最高の収支」だけ見て満足していませんか?
家賃の下落率がそれなりに設定されているシミュレーションであれば、信用できる可能性は上がります。
空室率
不動産投資で、永遠に満室なはずはありません。
どんなに立地の良い物件であっても、退去から入居までは多少でもタイムラグがあります。
立地や築年数によって異なりますが、空室率分は利益から控除されているようなシミュレーションが現実的です。
家賃総額から1%でも2%でも、空室分が控除されているのかどうかは重要です。
空室分が考慮されているようなシミュレーションであれば、良心的な不動産業者である可能性が高くなります。
管理費と修繕積立金(区分マンション)
管理費と修繕積立金の額は、ぞれぞれ明確に把握しておいてください。
管理費と修繕積立金は、同じ支出ですが、役割が異なります。
修繕積立金は、かなりの確率で、上がるようになっています。
修繕積立金が低すぎる場合は、今後上昇することも加味しておく必要があります。
非常に稀ですが、管理費と修繕積立金を家賃に含む、という謎な収支計算書にも出くわしたことがあります。
本来かかる管理費と修繕積立金を、あたかもかからないかのように作っている収支計算書でした(相当悪質です)。
管理費と修繕積立金は、区分マンション投資の中では大きなウエイトを占める支出です。
必ず両者の内訳まで確認しておきましょう。
賃貸管理手数料(区分マンション)
不動産の管理を管理会社に委託する場合、賃貸管理手数料がかかります。
時々、この金額を安く設定して収支計算書を良く見せようとする販売業者がいます。
不動産の販売業者は、販売時点で多額の転売益を得ているので、販売元が物件を管理する手数料を下げても、痛くもかゆくもないのです(違いは、毎月数百円から2,000円程度)。
安いからいいじゃん!
と思うかもしれませんが、実態は逆です。
賃貸管理手数料が低すぎる場合は、収支計算書を良く見せようとする作りになっていると思ってください。
危険な物件である可能性が高いのです。
区分マンションの場合、賃貸管理手数料の相場は、家賃の4%~5%(3,000円+税も多い)です。
この相場より管理手数料が低く設定されている場合は、要注意です。
収支計算書の賃貸管理手数料が相場より安い物件は危険
入退去費
不動産投資で一番お金がかかるタイミングをご存知でしょうか?
それは、入居者が退去してから、次の入居者が決まる、入れ替わりのタイミングです。
・退去した時にオーナーが負担する修繕費
・礼金が取りにくいような地域における新規客付け仲介手数料
・退去から入居までの空室期間
これらは地味にかかる費用であり、家賃の1ヵ月~3か月分ほどを見積もっておくと良いでしょう。
この費用も、退去が発生するとかかるため、予め概算でシミュレーションに含めておくべきです。
不動産投資でキャッシュフローが凹む(少なくなる)タイミングは、いつだって入れ替わりが発生した時なのです。
固定資産税
固定資産税は、不動産を所有していたら必ずかかる費用です。
固定資産税がシミュレーション上または収支上計上されていなければ、アウトです。
キャッシュフローに100%影響が出る項目であるため、必ずシミュレーション上に記載がないといけません。
意図的に固定資産税を省いて資料を作る不動産業者が多く存在しますが、都合の悪い部分を記入しないような会社ということで、関わらないほうが良いでしょう。
大規模修繕費(1棟物件)
修繕費の詳細まで載せる必要はありませんが、1棟物件の場合は、定期的に大規模修繕でそれなりの費用がかかってきます。
最低でもこのことを伝えておくべきです。
6戸~12戸ほどの木造・鉄骨であれば、足場込みで200万~400万ほどはかかる場合が多く、決して無視できる支出ではありません。
購入する物件が中古である場合は、修繕履歴を確認しておくべきです。
購入してすぐに大規模修繕が必要になると、思わぬ出費となります。
但し、1棟の大規模修繕は、火災保険を活用して行うこともできるので、実際にかかる費用は、上記金額の半分ほどです。
火災保険は、申請時期によって1棟あたり、100万~200万ほど出ます(スタンダードな木造や鉄骨)。
規模に応じて出る金額も増えるので、実際に支出は、思ったより少ないのです。
まとめ
収支計算書・シミュレーションは、紙一枚の話です。
しかし、それは、今後運用していく上では、大変重要なものになります。
・思ったより家賃が取れない
・思ったより支出が多い
という話は、よく聞きます。
購入時に不動産業者が作成した収支計算書・シミュレーションには、誤りが多いということです。
収支計算書上の数字を良く見せるための細工を施しているため、今回挙げたチェックポイントは、必ず確認するようにしてください。
特に、家賃の下落率は、その会社の資質を表す指標なので、よく確認するようにしてください。
下落率を大きくしている会社ほど、信用できるということです。
逆に、下落率が極めて低いような会社であれば、要注意です(家賃が下落していないようなシミュレーションを作ってくる会社であれば、完全アウトです)。
紙一枚でもわかることは沢山あるのです。
是非細かく見てください。
結局のところ、辛めの収支計算書またはシミュレーションをしっかりと作ってくれる不動産業者であれば、信用できるのです。
今回挙げたような項目が不足していたり、甘い設定の収支計算書またはシミュレーションを作成してくるような不動産業者は、不都合なことを隠す体質だと理解してください。
収支計算書やシミュレーションに誤りがあったとしても、それを責めることはできないので注意してください。
不動産投資は、投資です。
投資は自己責任です。